「華咲も嫌がっている。離してやってくれ。」
「そうだそうだ。」
「つれないねー、ま、そういう事されると燃えるんだけど。」


虎石君がそう言って1歩後ろに下がると 私は月皇君の後へ回る。
側に寄ると月皇君は優しく微笑んでくれた。今日の朝の様な苦しそうな顔が嘘のようだった。


「あれー?月皇君じゃん。」

急に声が掛かり振り返るとそこにはteam柊の面々が揃っていた。どうやら虎石君を探しに来たらしい。
卯川君は私そっちのけで月皇君に話し掛けるし、戌峰君は今日もにこにこ笑顔が眩しい。
辰己君申渡君は虎石君を軽く睨みつけると「大丈夫?虎石に何もされてない?」と話し掛けてくれた。残念ながら事後です。


「ごめんね、虎石は悪いやつじゃなんいだけど…」
「いいよ、気にしてない!寧ろ私が虎石君の彼女さん達に刺され…「何だと!?」
「…!!」


辰巳君たちと話に夢中になっていると急に後ろで月皇君が声を荒らげた。相手は卯川君だ。それと同時に声を聞きつけた野次馬がどんどん周りに集まってくる。
辰巳君や申渡君達はやれやれと溜息をついた。

「十中八九、卯川が月皇を煽ったんだろうね。」
「月皇君…。」

相当な事を言われたのか、ついに月皇君は卯川君の胸倉を掴んだ。

「もう1回言ってみろ!」
「やめとけって。」
「五月蝿い!!」

虎石君が月皇君の肩をだいて止めるが突き放される。

「だから。君は落ちこぼれチームにいても違和感が無いって言ってるの。ほらどうせお兄さんのオマケだし…。」

お兄さん、という単語を卯川君が発した途端、みるみる月皇君の表情が変わっていくのが分かった。これだ、今朝見た苦しそうな表情と、それに怒りの混ざった…

そろそろヤバイと感じたのか辰巳君も「栄吾、これ止めないと」と呟く。


「でも仕方ないか、天才的なお兄さんを持つ苦労っていうの…?誰だってひねくれちゃうよねえ…。」
「…!月皇君!!」

静止の声も叶わず月皇君はついに拳を振り上げ殴ろうとするモーションに入ってしまう。
取り敢えず公演前に問題を起こさせる訳には行かない、止めないと。

割と反射神経は良いほうだと思う。目を閉じる卯川君の前に立つ。
しかし、その喧嘩を止めたのは意外な人物だった。
星谷君が月皇君のパンチを手で止めたのだ。
その場にいる全員が言葉を失う。


「あっぶな…今殴ろうとした?流石落ちこぼれのお仲間だね!!」


ふと我に返ったのか、卯川君が声を荒らげると星谷君は真っ直ぐ卯川君を見据える。
その顔はいつもの楽しそうに笑っている彼とは全く別人のようだった。


「俺の友達を侮辱するな。」

星谷君は真っ直ぐ卯川君に言い放つ。

「俺が落ちこぼれ扱いさせるのは仕方ない。だけど月皇は違う。チームメンバーの俺達がちゃんと知ってる。何も知らないで勝手なことを言うな!」


だんだんと月皇君の表情が柔らかくなる。星谷君の言葉を聞いたからだろうか。
表情が和らいだ月皇君に安心していると私は卯川君の近くから距離をとる様に腕を引かれた。

「申渡君…」
「女性がこの様な乱闘に関わることはないですよ。」
「友達だって、君たちチームで仲良しごっこでもしてるわけ?そんなんだから…」

「そこまでです卯川。」

申渡君はやんわり掴んだ私の手を離すと卯川君の方へ歩み寄り、遂に静止の声をかけた。










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