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ココアの日



お待たせ、と差し出されたカップからほわんと甘い香りがした。それによってそういえば今日は木曜日だったことを思い出す。
毎週木曜日はココアの日。そんな変わった習慣を植え付けたのは言うまでもなく彼女である。仕事に集中すると自分のことが疎かになる悪癖を心配してあれやこれやと身の回りのことを気にかけてくれるようになったブルーが最初に言い出したのがカフェイン大量摂取についてだった。頭使ってるんだから糖分を摂れ。これが彼女の言い分だが、生活に必要な糖分は何も砂糖から摂る必要はない。寧ろお握りなんかを食べる方が効果的なのである。しかし丁度低血糖でぶっ倒れた時であったので、鬼のように怒る彼女にそんな説明を出来る空気ではとてもなく、妥協してせめて週一ココア案が通ったのだ。
正直甘いものは得意ではない。しかし彼女の淹れてくるココアは上手く自分の好みに合わせられており、いつの間にか木曜日が少し楽しみになっていたりする。調子に乗るのは目に見えているので口には出してやらないが。




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