解けるのは一人だけ
(…暇ったい)
帽子の少年が鼻歌を歌いながら手持ち達にブラシをかけている後ろで、バンダナの少女はむくれていた。 いつもそうだ。 彼は自分の手持ち達のコンディションを整えるのに夢中で、自分の事なんかほったらかし。 確かに、生き生きとしている彼を見るのは嫌いではない。 それに声をかけたところで言い合いになり、上手く丸め込まれてしまうのがオチだ。 それでもたまには気にかけて欲しいというのが本音だった。
「はぁーあ」 「何溜息なんか吐いてるの」 「るっ、ルビー!?」
何時の間にか先程とは別の道具を手にしたルビーが目の前に居た。
「はいはい後ろ向いてー」
呆けている間に後ろを向かされ、バンダナを解かれる。
「な、何ばすっとね!?」 「何って、髪がちょっと痛んでるみたいだから手入れしてあげようと思って」 「そんなん必要なか!」 「大丈夫だって。整えるだけだから」
栗色の髪にブラシを通しながらルビーが苦笑する。 仕方なく大人しく前を向いて前髪を指で梳いてみた。 確かにろくに手入れされていないそれは指通りは悪く、毛先はあっちをむいたりこっちに飛び出したり色んな方向を向いている。
「ルビー」 「何?」 「…有難うったい」 「?何が?」 「判らんならよか!」
大体整えたところですぐ荒れるのだが、後ろで彼がさっきより楽しそうに手を加える様子が嬉しくて、少し笑った。 何だかんだで、愛されている。
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