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くだらないと嘯いたハッピーエンドを望み始めたのはいつだろう




恋愛小説や少女漫画が嫌いだった。
どれもこれも幸せな終わり方しかしないから。
普通の女の子だったらそんな喜劇に憧れて夢を見るものなのだろうけど。

(そんな上手くいく話が在るわけない)

生憎とあたしは何も知らない無垢な子供で居られる時間が短すぎたようで。
何処か冷めた目でしか物事を見られなくなっていた。

しかし彼らに出会って失くした時間が戻ってきた。
気取って言えば「白馬の王子様が迎えに来た」とでも言うのかしら。
そして嫌いだった筈のベタな恋愛小説の展開の様に、あたしは彼に恋をした。


「…又読んでるのか」
「良いじゃない、好きなんだもの」

開かれた恋愛小説を覗き込んで、グリーンが呆れたように呟く。
偶には役に立つ物読んだらどうだ、なんて言われたが無視してページを捲った。
この話も多分、流れ的に幸せな終わり方をする。
それだけで何故か幸せをお裾分けされた気分になった。
同時に羨ましいと思う自分が居ることを、あの頃の自分が見たらどんな反応をするだろうか?







昔は恋愛小説が嫌いだったのよ。
そう呟いたら彼は明らかに信じていない顔をしていた。





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