17
「……智…」
和室に入り一つ呼吸を置く。感じた熱と汗の感触を思い出し有志は微かに勃起していた。
天を仰ぎ静まれ、静まれ、と何度も自分に言い聞かせるが、こもってしまった欲情は簡単に出ていってくれない。
「っ…ふっ……とも…き…」
涙目になりながら背広を脱ぎ乱暴に畳の上に投げ捨てると、同じく乱暴にベルトを外し震えながら下着の中に手を入れた。
明かりもつけず薄暗い和室で微かに聞こえる自分の熱のこもった吐息。
恥ずかしくて、情けなくて、耳を塞ぎたいけれど右手はどんどんその熱を刺激していく。
「はっ…あっ…あぁっ……あっ…ともっ…ともっ」
小さく、囁くような声で何度も智希の名前を呼び右手を加速していく。
滑りが悪いので唾液を溜めて右手につけると、すぐにペニスへ戻し荒く擦った。
「っ…!!と…も…」
滑りがよくなった所為でさらに脳内が沸騰したように熱くなってくる。
グジュグジュと卑猥な水音が響き半勃ちだったそれは震えながら硬度を着実に増していった。
「あっ…ふ…とも…ともき…」
高熱にうなされた子どものように何度も名前を呼んでは匂いを思い出す。
我が子特有の汗の匂いと、自分と同じ洗濯剤の香り。
本人は汗くさいと嫌ったが有志にとってそれは極上のおかずだった。
先端から溢れてきた精液をすくいさらに滑りをよくする。中途半端に履いていたズボンと下着をするりと畳に落とした。
膝下まで降りたズボンがシワになることなど気にせず前のめりに倒れこむと、四つん這いになり尻を高く上げ頬を畳に押し付けた。
ははっ…凄い格好…。
もし智希が中に入ってきたら穴丸見えだ…。
自嘲して笑うと、高く上げた腰を突き出して本能のまま前後に振って刺激を高める。
智希に入れられている時のことを思い出しながら、右手は大きく擦り左手で穴のフチをくるくるとなぞる。
自慰なんていつぶりだろうか。いつもは智希が触ってくれるから。白い液が出なくなり透明になるまで愛してくれるから。
っ……拒んだのは…俺なのに…
また自嘲して笑う。
もちろん自分の右手と智希の妄想だけで満足いくわけがない。
そんな体になってしまった。
なってしまった、じゃないな。
こんな体に、智希がしてくれた。
「っ……ともっ…もっ…くっ……ぁっ」
頬に痕が残るぐらいきつく畳に押し付け、想い人のいないまま有志は白濁の液を自分の右手にぶちまけた。
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