あーもう。ほんまなまえ先輩可愛すぎっスわ。あの可愛さは異常ちゃいます?なんか俺ただの面食いみたいになってますけど、ちゃんと先輩の中身も見て言うてるんスよ?

最初は、部長や謙也さんのクラスメイトってだけであんま興味なかったんすけど、屋上で堂々とサボるくせに意外と頭いいとことか、運動神経悪いのに体育頑張る姿とか、家帰ったらいきなり制服脱いで下着だけで過ごす大胆さとか。まぁ先輩の好きなとこ言い出したらキリないんすけど。見てて飽きひんし、たまに危なっかしいから先輩を見守るのが俺の趣味っていうか、まあ日課になりつつあるんすわ。今日は朝練がないから、久し振りになまえ先輩と一緒に登校できる。あ、そろそろ迎えに行ったらな。急いで待ち合わせの交差点を渡ろうとすれば、バッタリ謙也さんに会った。

「財前やないか!お前家こっちやっけ?」
「……ちゃいますけど」
「せやけど財前が朝から学校なんて珍しいな!」

なまえ先輩と一緒に登校するためやないっすか。謙也さんアホちゃいます?まあ別にいいんスけど。謙也さんを置いてなまえ先輩の元へ駆け寄れば、なまえ先輩が俺を見て「おはよう」と笑いかけた。この笑顔保存保存、っと。しっかり俺の脳内に焼き付けてから挨拶を返そうと思った時、俺の真後ろから「おはよーさん!」と聞こえてきた。咄嗟に振り向けば、置いてきたはずの謙也さんが満面の笑みで俺のなまえ先輩に話し掛けてる。

…は?

謙也さんも空気読んでくださいよ。さっきのなまえ先輩のおはようは、彼氏である俺に挨拶したんすよ?だから部長にもKY言われるんすよ。俺の気も知らずになまえ先輩は謙也さんと談笑してる。あーほんま腹立つ、今日は先教室入ったろ。二人を置いて下駄箱まで行った時、更に最悪なことに部長と会った。

「おー財前。…てやけにテンション低いな、何かあったんか?」
「…朝からついてないだけっすわ」
「ふーん。…にしても財前が一時間目からおるて珍しいな。」

珍しいとか、部長まで言うんすか。せやから彼女であるなまえ先輩と一緒に登校するんとか、彼氏として当たり前なんすけど。後ろを振り返ればまだなまえ先輩は謙也さんと喋ってる。先輩はそんなに謙也さんと話したいんすか?こんなんどっちが彼氏か分からないやないすか。イライラして下駄箱をおもいっきり閉めたら、部長だ「大丈夫か?」と俺に聞いてきた。まぁ、と適当に返したけど大丈夫な訳がない。目の前で彼女が浮気してたら、そりゃ嫌っしょ。せやから、今日の放課後にしっかり話し合いたいんすけど、となまえ先輩にメールしておいた。








放課後になっても先輩は待ち合わせ場所に来うへん、あかんさすがの俺でもキレそうや。むかつくから先輩の部活が終わるまで下駄箱の前で待っといた。じゃあのこのこやって来る先輩を見て、更にムカついたから腕を掴んで近くの空き教室まで連れて行った。

「ちょ、ちょっと!えーっと、確か財前くん…だよね?」
「なんでいつもみたいに光って呼んでくれないんすか?」

今日のなまえ先輩可笑しいっすよ、だって彼氏は俺やのに謙也さんと話したり謙也さんに笑いかけたり…そういうの浮気って言うんすよ。

そこまで一気に言うた時、目の前の先輩は訳が分からないといった顔をしていた。これやから先輩の天然なとこは困るんすわ。

「でも、俺がちゃんと躾けてあげますから。安心してください。」

優しく笑いかけたのに、先輩は絶望した顔で離してと俺を拒絶した。なんでそんなこと言うんすか、なんで…俺はこんなに好きやのに、なんで。

全然、笑えへんわ。ほんまに。


財前光