毎日ラッキーアイテムを持って入店するオハ朝占い信者がいる。彼は秀徳の生徒なのだが、これがなかなか面白い。ある時はテニスラケット、またある時は赤い風船やピンクのネクタイ、更には狸の信楽焼なんて時もあった。傍から見れば馬鹿馬鹿しいかもしれないが、彼にとってオハ朝占いのラッキーアイテムを身に付けることは「人事を尽くす」ことらしい。
「緑間くん今日は何持ってるのー?」 「今日はこれなのだよ」 チクタク鳴るそれは、昔音楽室に置いてあったメトロノームだった。そんなものまで持っているのか…っていうか、ラッキーアイテムがメトロノームだと持てる人限られるじゃん! 「緑間くんメトロノームまで持ってるんだね」 「これは借りたのだよ」 「え、誰から?」 「朝練前に音楽室に忍び込んで、置いてあった一つを持って来たのだよ」 どや顔で言ってるけどそれ、犯罪だからね。バレたら窃盗罪になると思うんだけど。 「ふっ、明日また返すから問題ないのだよ」 彼はオハ朝のラッキーアイテムを手に入れる為なら、手段は選ばないらしい。恐るべし信者。オハ朝は一種の宗教かもしれない。 「あ。真ちゃんヤッホー」 緑間くんと話していれば、触角がやって来た。何しに来たのだよ、と緑間くんは心底嫌そうな顔をしてたけど、あんたら仲間じゃなかったっけ? 「なまえさんに会いに来たついでに、DVD返しに来ただけだって!」 逆だろ、と思ったけど敢えて口には出さない。触角は相手にすると疲れるのだ、いろいろと。別に嫌いとかじゃないんだけど。 「で、真ちゃんは何しに来たわけ?」 「貴様に言う必要などないのだよ」 「えー!真ちゃんと俺の仲だろ?教えてくれてもいいじゃん!」 ねぇ何しに来たの?としつこい程尋ねる触角に、緑間くんは渋々答えていた。 「メトロノームを見せに来ただけなのだよ」 …………。はい?え、なに?それだけの為にわざわざ学校から自転車で二十分も掛かるこの店まで来たの?え?? 「真ちゃん流石にもっとマシな言い訳にしなって!メトロノーム見せに来たって!」 それはねーわ、とお腹を抱えて笑う触角だがお前も一緒だ。「うるさいのだよ!」と緑間くんは触角を連れて帰って行った。結局緑間くんは、本当にメトロノームを見せに来ただけじゃないか。あの二人ということは、帰りは触角がリアカーを引いて帰るに違いない。見たかったなー、噂のチャリアカー。だってリアカー乗るだけって楽そうじゃん、全然人事を尽くしてないけど。 しかし毎日来る緑間くんは、ぶっちゃけ気になる。彼はいつもラッキーアイテムを見せに来るだけで、別に何かを借りるわけでもない。まぁいいんだけどさ。 明日は一体、何を持って来るのだろうか? 緑間真太郎with高尾 |