この店の常連は、結構みんなルックスが高い。その中でも彼、黄瀬くんはかなりのイケメンである。まぁ私の好みじゃないんだけどね。

「なまえっち!今日発売の雑誌見てくれたっスか?」
「えー、見てないですけど」
「なまえっちぃぃぃぃぃぃ?!俺先週から言ってたじゃないっスかぁ!!」

彼は人気モデル…らしい。らしい、というのは私が芸能人に興味がないからで、彼のことも(有名らしいけど)全く知らない。いや本当に知らないんだよね。だから自称モデルの人だと思っている。つーか煩い、ちょっと黙ってほしい。

「メンエグで俺特集されてるんスよ!」
「へー」
「色々な俺が見れるんスよ!!」
「…へー」
「って、なまえっち反応薄過ぎっスよ!」

メンエグ載るなんてスゴいですねー、と褒めてあげれば「棒読みじゃないっスかぁぁ!」と言われた。じゃあどうしたらいいんだよ。っていうか本当に煩い。

「じゃあ特別にこれあげるっス!」

自称モデルに渡されたのは今月のメンエグだった。照れ臭そうに「なまえっちの分っス」とか言われたけど別に頼んでないし。むしろ私、雑誌読まないから要らないし。

「いやいいです、なんか悪いんで」
「えええ!!受け取って下さいよ!なまえっち用に俺のサインしといたんスよー!」

ご丁寧にサインまでしてくれたのか。つーかサイン?え、サインまであるの?本格的だなー。

「あ、じゃあ俺バスケの練習行って来るっス!なまえっち!ちゃんと雑誌見て下さいね!」

無理矢理雑誌を渡されたと思えば、彼は急いで帰って行った。おいおいおい!!なんか要らない物(ゴミ)押し付けられたよ!え、セルフで古紙回収に出せよ!

「なまえさん、上がりです」

丁度その時、自称モデルと入れ違いで赤司くんがやってきた。私は上がりの時間になったので、引き継ぐついでにさっきの雑誌をあげれば、彼は不思議そうに首を傾げた。

「…これは」
「今月のメンエグだよー。なんか貰ったから、赤司くんにあげる」

赤司くんはメンエグをパラパラと捲った後、あるページで手を止めた。そして「涼太…」と呟きながらそっとメンエグを閉じ、そのまま迷う事なくゴミ箱に捨てていた。

「なまえさん、お疲れ様でした」
「あ、うん。お疲れ様…」

意外と赤司くんは、厳しい人である。


黄瀬涼太