完璧だったはずの計画

他の女とは違い、俺様に媚びない名前が好きだった。やっとの思いで仲の良い友達の位置まできた時、あいつと宍戸は親友の部類に入るくらい仲が良かった。たまにテニスコートに来る名前は、俺ではなく宍戸ばかり見ていた。宍戸がレギュラー落ちした時、部室で慰めていた名前を見て確信してしまった。

あいつは宍戸が好きだ。

宍戸も他の女より名前に優しかった。「あいつに慰められるなんて激ダサだぜ」と言っていた顔は、言葉とは裏腹にどこか嬉しそうだった。短髪になった宍戸に「そっちの方が似合ってるよ」と照れ臭そうに笑う名前の顔は、今までみた中で一番綺麗だと思った。宍戸の話題になる度にあいつは笑っていた。いつの間にか「宍戸」ではなく「亮」と呼んでいるのに俺は気付いてしまった。宍戸に鎌をかければ、付き合い出したとあっさり白状しやがった。

「でもよー、何で分かったんだよ」
「…俺様の眼力をなめんじゃねーよ」

宍戸に本当のことを言えなかった自分が少しだけ嫌になった。そんなことも知らない宍戸は「まだ跡部にしか言ってねーんだから、誰にも言うなよ。」なんて言いながら呑気に名前と帰っていった。そんな宍戸と名前の後ろ姿をジッと眺めている視線が、俺だけでないことに気付いた。

「…宍戸、さん?」
固く握られた鳳の拳は薄らと血管が浮いていた。その瞳は哀しみに満ちていて、あぁこいつも俺と同じだ、と直感的に思った。宍戸の彼女が名前だと鳳に伝えれば「宍戸さんにまとわりつく女なんて消えてしまえばいいのに」と顔を歪ませながら笑っていた。

良く言えば利害の一致、鳳は宍戸を取られたくない、俺は名前を取られたくない。そんな単純な理由で鳳に計画を持ちかけた時、あいつは喜んで引き受けた。まさか忍足も加わるなんて思ってもいなかったが、あいつと宍戸が直ぐに別れるなら別に問題ないと思って計画に混ぜた。

「お前が好きだ」

あんな形で告白するつもりなんて微塵も無かった、宍戸と別れたところを慰めて告白するつもりだった。俺の計画に狂いは無かったはずだった。鳳は俺が言った通り名前を犯し、その一週間後忍足と俺で無理矢理犯した。どこだ、どこで間違ったんだ。思い出せ。今思えば、忍足の行動全てが可笑しい。大体、あいつが女関係に困るわけがない。それなのに自分から交ざりたいと言った。何故だ。引っ掛かるのは忍足の言葉と行動、特に化学室での。



「堪忍なぁ、この計画したん跡部やねん」
そうだ、そんなことバラせなんて忍足に言った覚えはない。俺はただ黙って犯せと伝えたはずだ。じゃあ、あいつは何故バラした?


そんな時、顔を上げれば忍足がいた。
「俺の姫さんは誰にも譲らへんで。例え跡部、お前でも…な?」



心を閉ざすなんて、せこいと思わねーか?なぁ、樺地。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -