ここだけの話

そうだね、ここで昔話でもしようか。俺が誰かは模索しないでほしいな。匿名希望、ってことにしておくよ。じゃあ昔話に戻るね、

小学生の頃、立海の柳と青学の乾は同じテニスクラブに通っていた。これはみんな知っていると思う。そう、たまたま名前も同じテニスクラブに通っていたんだよ。彼女は特に柳と仲が良かった、意気投合って感じでね。でもね、直ぐに彼女の気持ちが変わっていった。そのうち柳に対する好きが、ライクではなくラブの意味に変わっていったんだ。
彼も同じだったよ。名前は覚えてないかもしれないけれど、引っ越す前日、柳は彼女に告白している。それでも引っ越すことは伝えられなかった。つまり、柳は名前の前から突然去った形になってしまったんだ。彼はずっと悔やんでいたよ。態度には出さないけどね、俺には分かる。

それでも彼は、何かを残したかった。自分の事を忘れられたくなかったんだろうね。引っ越す前日、その告白の時にお守りをプレゼントしたんだ。彼女はそれをとても大切にしていた、肌身離さずって感じでね。だけどそのお守りも、彼女は失ってしまう。

柳がテニスクラブを去ってからも、彼女は通い続けていた。いつかきっと、また彼が戻ってくれると思っていたからね。彼がテニスを愛しているのはよく知っていたのだから。
そんなある日、彼女の小学校に転校生がやって来た。そう、仁王だよ。仁王のお父さんは転勤族でね、よく転校していたんだ。彼女の学校に居たのも、ほんの三ヶ月だけだった。
彼女と同じクラスになった仁王は直ぐに彼女に惹かれたよ。席替えで隣になった時は、泣いて喜んだくらいなんだから。

その時に仁王は、たまたまお守りを見付けた。彼女に聞けば「とても大事だよ」って笑って言ったんだ。いつしか仁王はそのお守りが欲しくなった。よくあるでしょ?好きな子の私物が欲しくなっちゃうアレ。例えば、リコーダーを舐めたり体操服を盗んだり。俺もしたことあるしさ、…って今のは内緒ね。
ついに仁王は、一大決心でお守りを盗むことにした。勿論、普通に盗めばバレるから彼は考えた。誰かに変装しちゃえばいいんだ、って。彼女の家に遊びに行った時、たまたまベッドに立て掛けてある写真立てが目に入った、それが柳と一緒に写っている写真だったんだ。それを見て、仁王は柳に変装しようと決めてしまった。
そして仁王が転校する日に、彼は柳に変装して彼女のカバンからお守りを盗んだんだ。盗むことは成功した。彼も色々シュミレーションしていたからね。ただ問題があった。運悪く立ち去る時に彼女に遭遇してしまったんだ。彼女は驚いたよ、ずっと会いたかった人が目の前にいるんだから。そうとは知らず、仁王は戸惑いを隠せなかった。そりゃ、彼女は嬉しそうに他の男の名前を呼ぶんだからね。

「人違いじゃよ。」

仁王はそう言い残して彼女の元から去った。彼女はすぐに柳ではなく仁王だって気付いたよ。あの独特な口癖を使う人なんて、そうそう居ないからね。それと同時に、お守りが無いことも気付いた。ショックだったろうね、友達だと思っていた仁王に裏切られるなんて。次の日お守りを返して貰おうと彼女は思っていたみたいだけど、仁王は彼女に嘘を吐いていた。柳と同じで転校することを黙っていたんだ。翌日担任から知らされたのは、仁王の転校。でも彼女は仁王が言っていた「中学生になれば外国に住む」っていうのをずっと信じていたんだ。
結局仁王は、そのままお守りを返すことなく彼女の元から去った。そして彼は動揺してしまってね、引っ越しの日にお守りを近くの川に捨てちゃったんだ。
それから暫らくして、彼女はテニスクラブを辞めた。突然だったからね、乾も驚いていたよ。

そこからは俺もよく分からない。ただ一つ言えるのは、これから名前ちゃんは大きな決断をしなくちゃいけない。例えば、宍戸と別れたり…とか。これはあくまで俺の憶測だから分からないけどね。
それにしても名前ちゃんは不思議な子だよ。こんなに色々な男を惑わすなんて、一種の才能だろうね。柳や仁王だけじゃなく、氷帝のみんなも虜にするなんてさ。
本当にこれからが楽しみだよ、ふふ。もしかしたら宍戸以外の氷帝の誰かと付き合うかもしれないし、立海の誰かと付き合うかもしれない。勿論俺もキミも候補に入ってるよ。ねぇ、キミはどう思う?


オオトリチョウタロウくん。



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