神の子は何でも知っている

面白いもの、で釣られる丸井はやっぱり馬鹿だ。あいつお菓子ばっか食ってるから馬鹿なんだよ。それにしても仁王の反応は、結構面白かったなぁ。皺を伸ばす手が震えてたしね。勿論、仁王と名前がああいう仲だってことは、知ってたよ。え?何でかって?だって俺、神の子だもん。

「…やっぱお前は確信犯か」
「協力してるんだから、いいじゃん別に。教えてあげたのも俺でしょ?」

そうだったな、って跡部は言うけど本当は跡部に言ってないことが一つだけあるんだよね。まぁ言う気は更々無いけど。跡部に言ったらさ、俺の楽しみが減っちゃうし。

「で、これからどうする気?」
「…何がだよ」
「名前ちゃん、だっけ?まだ別れてないんでしょ?」
「ああ」
「どうするわけ?」

内緒だ、と笑う跡部に寒気がした。俺、けっこーヤバい奴と組んじゃったかも。まぁ楽しんでる俺も一緒か。跡部と別れ、皆の所に戻れば丸井がいなかった。

「あ。幸村ぶちょー!丸井先輩なら氷帝のジローとかいう奴のとこに行ったっスよ!」

あいつは本当に手を焼かせやがって。仕方なく丸井を探せば、男子トイレの方から丸井の声がした。

「なぁジローくん、何なんだよあいつ!」
「それ俺に言われても困るCー!」
「だってよ、仁王も柳も知り合いっぽいんだよぃ…」
「えーマジマジ?」
「おう…。なぁ、あいつマネージャーな訳?」
「臨時マネだから、普段は違うCー!」

ふーん、と丸井が呟いた後、俺は何も知らないフリをしてトイレに入った。俺を見るなり丸井は慌てて何かををポケットに閉まっていた。へぇ、俺に隠し事でもする気なんだ。

「丸井、試合始まるから集合。」
「あ、んじゃなジローくん!」

丸井くんバイバーイ、とひらひら手を振る芥川を置いて、俺と丸井は真田達の元に戻った。ああ、さっき丸井は何を隠したんだろう。気になって仕方ないや、…これは俺の悪いクセなんだけどさ。

「ねぇ丸井、さっき芥川と何話してたの?」
「…幸村くん気になんの?」
「少しね、」
「あー、あれだよぃ…ボレーの話。」

丸井は微妙に俺から視線を外して言うけど、バレバレだから。丸井って馬鹿な分、仁王より分かりやすいよね。俺から視線外すなんて、やましいことを隠してるに決まってるじゃないか。

「幸村、そろそろ試合じゃないか」

真田に呼ばれて氷帝のところまで挨拶しに行ったけれど、名前ちゃんはいなかった。

「あいつならスコア表を取りに行った。」
「…ふーん」

折角直接挨拶しようと思ってたのに、…まあ後で会うからいいか。それにしても、跡部もなかなか白々しいね。他の部員を見たけれど、みんな不気味なくらい本心が読めなかった。芥川はニコニコしてて何考えてるか分からないし、忍足は心を閉ざしちゃうし。丸井が分かりやすいだけかもしれないけど。

「幸村、一試合目はどうする。何時ものように丸井と芥川か?」
「…今日は変えようよ。蓮二と宍戸でいいんじゃない?」

ね、と真田に相鎚を求めれば、何も知らない真田は素直に頷いていた。

「お前も俺と変わらねーだろ」

試合の準備を始める二人を見て、跡部は笑いながら俺に近付いて来た。

「跡部こそ、この組み合わせで試合させるつもりだったんじゃないの?」
「……まあな」

否定しないあたり、やっぱり俺たち同じじゃないか。人の不幸を喜ぶ俺も、自分の思い通りにさせたい跡部も。…結局みんな、自分が一番可愛いんだよ。



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