仕組まれた運命

「あ。昼食忘れたナリ」

最悪じゃ、寝坊したせいで昼食忘れたぜよ。参謀に聞いたら、氷帝の近くにコンビニがあるって教えてくれたので、俺とブンちゃんはコンビニに寄ってから行くことにした。ついでに幸村に頼まれたシュークリームを買おうとした時、見覚えのある女の子が杏仁豆腐を手に取っておった。

「久しぶりじゃのぉ」
「……え、?」

俺を見る名前の目は、驚愕と戸惑いが混じったような目じゃった。まぁ仕方ないの、名前は俺が外国にいると思っとるんじゃから。

「何年ぶりじゃ、名前と会うのは」

無意識に懐かしいの、と呟いたが名前はキョロキョロと視線を泳がせるだけじゃった。もしかして、まだ…俺のことを恨んどる?名前にあの事について弁解しようとした時、ブンちゃんがやって来た。…ブンちゃん、タイミング悪過ぎぜよ。

「お前、知り合いだったのかよぃ」
「…内緒ナリ」

何となく名前に掛ける言葉が無くて、黙ってブンちゃんを連れてコンビニを出た。コンビニを出た瞬間、ブンちゃんはしつこいくらい名前のことを聞いて来た。

「な、あいつジローくんのメールの写真の子だよな?」
「……」
「仁王、あいつと知り合いなんだろ?どういう関係なんだよぃ」
「秘密じゃ」
「秘密とか内緒は無しだろい!」
「…言いたくなか」

何を聞いても言わない俺に、ブンちゃんは諦めたのか氷帝に着く頃にはお互い無言じゃった。ブンちゃんが黙ってたら、何か気まずいんじゃけど。

「二人とも遅かったね、…俺のシュークリームは?」
「ちゃんと買ってあるぜよ」

シュークリームを差し出せば、幸村は嬉しそうに頬張っていた。食べるん早すぎじゃ、…まだ試合始まってないぜよ。

「そうそう、今から面白いのが見れるよ」
「面白いの、…って何だよぃ?」
「ふふ、聞きたい?…蓮二が初恋の女の子との数年ぶりの対面。ね、面白いでしょ?」

口の端に付いたクリームをペロリと舐める幸村は、ブンちゃんではなくじっと俺を見つめていた。…何で俺を見るんじゃ。

「今から見に行かない?」
「…なかなか悪趣味じゃな」

いいじゃん、蓮二だし。と幸村は言うが参謀にバレたら絶対どやされるナリ、…俺とブンちゃんが。でも見てみたいのも事実じゃから、黙って幸村に着いて行った。段々嫌な予感がするのは、気のせいじゃろうか?心臓が少しだけ痛い、何でじゃ。
参謀にバレないように、ギリギリ声が聞こえるくらいの距離から見ることにした。木の後ろにそっと隠れれば、幸村が「来たみたい」と教えてくれた。……てかブンちゃん、木からハミ出てるぜよ。

「久しぶりだな、……」
「っ、れん…じ?」

声しか聞こえんけど、たぶんあの子が参謀の初恋の子なんじゃろ。俺視力悪いし、この距離じゃ顔がはっきり見えん。どんな子かブンちゃんに聞こうとすれば、目を見開いたままブンちゃんは俺のジャージの裾をギュッと握ってきた。そんな握られると皺出来るじゃろ、ブンちゃんの馬鹿!

「仁王、あいつ、」
「ブンちゃん皺出来るナリ」
「いや、だからあいつ…」

ブンちゃんがパッと手を離したと思えば、横から水色のジャージを着た奴が出て来た。あー、あれは何となく跡部って分かるぜよ。なんか、オーラが跡部っぽいナリ。

「なぁ、何なんだよ?仁王もジローくんも、…柳も」
「?、何がじゃ」

跡部が女の子を、半ば無理矢理引き連れようとしているのが見えた。参謀は黙ったまま動かない、…もう対面は終わりなんか。全然面白くなか。ブンちゃんによって作られた皺を伸ばしていた時、跡部の声がはっきり聞こえた。

「行くぞ、名前」

顔を上げれば、今にも泣きそうな名前と笑っている跡部が見えた。何で名前は泣きそうな顔してるん?何で跡部は笑ってるん?何で参謀の初恋相手が名前なん?…じゃあ、名前のあのお守りは

「ね?面白かったでしょ」

俺に笑いかける幸村の顔が、跡部とダブって見えたのは気のせいじゃろうか?



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -