彼女の知り合い

ほんま跡部って、何考えてるかよう分からんわ。

いきなり名前をマネージャーにするなんて可笑しな話や。マネージャーにして、独り占めでもするつもりかいな?そういうつもりなら、俺が全力で阻止するけどな。今日はやたら岳人とこそこそしとったし。…まさか、岳人も名前がマネージャーなること知っとったんか?それってペアの俺を裏切った、ってことやんなぁ?

「そういうの、酷いと思わへん?」

隣におる岳人に問い掛ければ「はぁ?」と、よく分かってないような顔をしてた。何でもないわ、とだけ返せば、岳人はダルそうに携帯を弄り始めた。
…せや、跡部のパソコンのデータ見たらええんちゃうか?流石に携帯は、常に持ち歩いてるとなると難易度高いし。生徒会室にあるパソコンなら、イケるんちゃうか?今日の俺冴えてるやん、と自画自賛してから岳人を置いて生徒会室に向かうことにした。
鍵が掛かってたらどないしよ、とか思ったけど、そんな心配いらんかったわ。なんや、無用心やなあ。普通、他の生徒の出入りを防ぐため、鍵くらい掛かってるもんなんちゃうん?開けっ放しやったら、俺みたいなやつに侵入されんで。

「まぁ、俺的にラッキーなんやけど。」

俺もラッキー忍足とか名乗ろかな。千の技を持つラッキーボーイとか格好良くないか?…まぁええわ。万が一のことを考えて、一応鍵を掛けてから早速パソコンを立ち上げた。「テニス部」とか「生徒会」とかのフォルダはあったけど、名前に関連するフォルダは無かった。

「…なんや、無いんかいな。」

諦めて電源を切ろうとした時、テニス部のフォルダの中に、タイトルがない無題のフォルダを見付けた。

「まさか、」

開こうとしたけど、このフォルダだけパスワードが無いと開かんタイプやった。「絶対これや……」小さく呟いてから、ありきたりな跡部の誕生日とか名前の誕生日を打ち込んでも開かへんかった。
何やねん、誕生日ちゃうんかいな。ちょっと心折れそうなったけど、確信に近いものがあるから、意地でも当てたるわ。でも他に心当たりとか無いんやけど。四文字の数字って……、

「あかん、全く分からん。」

適当に打ち込んだ1234も1111も全部外れた。誕生日以外、四文字ってあるか?無いやろ。半ば苛立ちながらレギュラー陣の誕生日を打ち込んで行けば、…当たってしもたわ。

「…何で俺の誕生日やねん。」

跡部は裏をかいたつもりなんやろうなあ。やけくそやったけど、やっぱ俺ついてるわ。ラッキー忍足って異名、名乗ってやろかな。早速フォルダを開けば、名前の経歴と、通ってたと思われるテニスクラブのリストやった。

「これ、」

リストの中に青学の乾と、立海の柳の名前があった。まさか、名前が、あの二人と知り合いなんて。知り合いってことは、名前をマネージャーにしたんもこれが関係してるんか?
そこまで考えた時、鍵が開く音がしたから急いで電源を切った。跡部やったらどないしよ、言い訳考えとけば良かったわ。

「跡部ー、っていねーのかよ」

入って来たのは予想を裏切って岳人やった。っていうか、何で岳人が生徒会室に来てるんや?

「…岳人」
「げっ、侑士!」

あからさまに顔をしかめるって、何やねん。俺らペアやし、さっきまで一緒におったんやけど。結構グサッて来るわあ。

「で、何でここにおるん」
「…跡部に、呼び出されて。って、侑士こそ」
「あー、調べもん。それより岳人、俺に何か隠してるやろ。……例えば、名前が柳と知り合いやったとか」

そこまで言った時、岳人は唖然としていた。「は?それ、マジかよ、」目を見開いて動揺する岳人見て分かったわ、これは跡部一人が企んだんや。つまり岳人は利用されてるだけ、跡部もやりおるなぁ。って、俺が岳人を引き込んだようなもんか。

「岳人もツイてないなぁ」

やっぱ片方がラッキーすぎたら、ペアは苦労するんかな。まぁ今日の収穫としては、こんなもんやろ。



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