崩壊へのカウントダウン

亮と付き合い始めたのが今から一週間前。皆には内緒で付き合っているので、勿論私たち以外誰も知らないと思っていた。しかし亮に「俺のペアの後輩にどうしても紹介したい」と言われたのでその後輩クンに会うことになった。

「宍戸さんの彼女さんですよね?初めまして、鳳長太郎です」
「えっ、あっ、初めまして…」

人懐っこい笑顔を見せる鳳くんの第一印象は犬、だ。まるで耳や尻尾があるかのように錯覚してしまうくらい私の飼い犬に似ていた。それから三人でしばらく話し込んだのだが、途中で跡部に呼び出された亮が慌てた様にテニスバッグを掴んで教室から出て行った。

「じゃあ、私も帰るね」

亮がいなかったら鳳くんと二人きりも辛いので、帰ろうとすれば彼に引き留められた。

「名前さんは、何で宍戸さんと付き合ってるんですか?どうやって宍戸さんの彼女になったんですか?」
「え、?あっ、好きだから付き合ってるんだよ。」
「でもどうせ宍戸さんがテニス部だから、ですよね?」

さっきまで見せていた人懐っこい笑顔ではなく、酷く冷めた顔で私を見る鳳くんに初めて怖いと思った。

「ちがう、よ。亮が野球部でもサッカー部でも帰宅部でも亮のこと好きだよ、」
「…そうですか。でも宍戸さんと貴方は釣り合いません。だから別れてください」

さっきまでの雰囲気はガラリと変わり、まるで人が変わったかのようだった。

「…え、?」

喉の奥から絞りだした声は、自分でも分かるくらい可笑しなくらい震えていた。そんな私とは真逆に「頭の悪い人ですね。だから宍戸さんと別れてください」と平然と言う鳳くんをもし亮が見たら卒倒するだろう。亮から聞いていた鳳くんのイメージは、この瞬間音もなく崩れ去った。

「…鳳、くん?」
「気安く呼ばないで下さいよ。宍戸さんの彼女だから、もっと美人で頭の良い人だと思ったんですけどね、残念です。」

どさり、
そんな効果音と共に私は床に押し倒された。上を見上げれば鳳くんが私に跨っていて、まさに今スカートの下に手を入れられそうになっている。

「え、…あの、?」
「勘違いしないで下さい。俺は貴方のことが好きとか全く思ってませんから。一言で言うなら害虫駆除、です」

途端、私の下着を剥ぎ取れば慣らしていないそこに勢いよく指を入れられた。今までそういう行為をしたことがない私には痛くて怖くて、鳳くんが信じられなかった。

「っ、やめて!」
「男は好きでもない人とでもヤレるんです。宍戸さんと金輪際関わらないならやめますけど?」
「お、おとりくん…?」

スッと髪を触られたかと思えば、次の瞬間おもいっきり引っ張られた。

「話聞いてました?俺の名前を気安く呼ばないでくださいって、さっき言ったんですけど」









そこからは地獄だった。無理矢理慣らされないまま鳳くんに犯され、やめてと叫べば「本当に五月蝿い人ですね」と首を絞められた。

「どうですか、別れる気になってくれました?」
「い"、あっ、や」
「可笑しいなー。無理矢理犯せば言う事聞いてくれると思ったんですけどね」
「…や、」
「あっ、もしかして宍戸さんの弱みを何か握って、それをネタに脅してるんでしょ?そうじゃなかったら宍戸さんがこんなアバズレビッチと付き合う訳ないですよね。」
「ちが、」
「っ、早く宍戸さんと別れてください!宍戸さんの隣にいていいのは、俺だけなんです!」

その後はガツガツと腰を動かす鳳くんに揺さ振られるので精一杯で、あまり覚えていない。ただ、気が付いたら股の間から白い液体がドロリと零れ落ちている隣で、鳳くんが自分の衣服を直していた。

「あ、そうそう。宍戸さんにこのこと言ったら、…写真ばらまきますから」

いつの間に撮られたのか分からない写真を見せながら、さっさと教室を出る鳳くんの後ろ姿を眺めていれば携帯電話が鳴っていることに気付いた。こうなった原因の人であり、今一番会いたくない人からの着信で、さっきまで堪えていた涙が全て零れ出した。




<着信:亮>



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