知らない女

「えっ?来週ある氷帝との試合、俺らが行くのかよい」

隣で仁王はめんどくさいのぉー、と欠伸をしていた。毎回氷帝の奴らが来てくれてるから、てっきり今回も来てくれると思ってたんだけど。つーか仁王、俺に寄りかかってくんなよな。

「そうなんスよ!なんか今回は俺らが行くって部長が決めちゃったみたいっス!あとおやつは300円までって幸村部長は言ってたんスけど、500円にならないっスかね」

知るかよい、と噛んでいたグリーンアップルのガムを膨らませれば、隣にいる仁王が指で突いてきた。わっ、危ね。…つーか幸村くん、おやつは300円までとか絶対ピクニック気分だろい。

「300円ならうめー棒は外せないっスよね!」
「ブンちゃんは何買うんじゃ?」
「とりあえず飴とガムだろい」

自分の髪を編み込む仁王に、適当に答えてから、携帯の電話帳にある"芥川慈郎"という名前を探し出しメールを打った。色々と聞きたいことがあってメールを打ったのに、直ぐに来た返事は「レギュラーで、今までテニスクラブに通ったことがあるの誰ー?」という内容だった。
ん?テニスクラブに通ったことがある奴?何でそんな事聞くんだよい。……つーかジローくん、俺の質問まるっきり無視なんだけど。

「彼女か?」

編み込むのに飽きたのか、勝手に俺の携帯を覗き込む仁王に呆れながらも否定すれば、赤也まで「丸井先輩彼女いたんスか?」なんて聞いてきやがった。

「バッカ、いねーよい。氷帝のジローくん。」
「あー…、あのよく寝てる人っスか!」

なんじゃ、つまらんのぉと口を尖らせる仁王の口を摘めば「やめんしゃい!」とおもいっきり嫌がられた。うわ、今のマジで傷付いたんだけど。

「でも氷帝の奴が丸井先輩に何の用なんスかー?」
「あー、何か立海のレギュラーでテニスクラブに通ったことがある奴探してるらしいんだけどよい、そんなんいっぱい居んじゃね?俺も通ってたし」
「俺通ってたナリ」
「マジ?」
「嘘じゃ」
「………」
「仁王先輩の過去は謎っスよね!通ってたと言えば、幸村部長に真田副部長、柳先輩と丸井先輩と俺ぐらいっスかねー。ジャッカル先輩はどうなんスか?」
「向こうでテニスしてたけどなー」

じゃあしてないのは柳生先輩と仁王先輩っスねー、と赤也が言えば「俺はしてたぜよ!」と必死に反論していた。赤也の言った内容を丸々ジローくんに転送すれば、ある女の子の写真付きで返信が来た。

「?誰だ、こいつ」

メールの本文は「この子知ってるー?」という一文だけだった。あー、ジローくんの考えてることさっぱり分かんねー。

「丸井先輩、誰っスかそいつ」
「俺も知らねーよい。仁王知らね?」
「………さあのぉ」

一瞬、仁王が答えるまで間があった。それに写真を見せた瞬間、仁王の目付きが変わった。何度聞いても「知らんのぉ」と言いつつ写真をジッと見る仁王に少しだけ違和感を感じたが、それからは普通だったので気のせいだと思う事にした。

つーか結局、あの女の子って誰なんだよい。



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