これの続き



最近あいつがヘンじゃ。前までなかったデートのドタキャンが、ここ数回立て続けに起こっちょる。浮気、その二文字を疑ったけどそんなわけなか。アイツが浮気なんてするわけないじゃろ。だって俺イケメンだし、アイツのこと愛してるし。

「雅治ー、聞いてる?」
「すまんすまん、ちゃんと聞いとるぜよ」

あー、誰じゃっけこいつ。確か…隣のクラスの愛美?あれ愛奈じゃっけ?まぁどっちでもええけど。ていうか臭い、香水臭い。俺この臭い嫌いじゃ。

「でさあ、ブン太ってば浮気してたわけ!」

浮気とか今、一番聞きたくない単語なんじゃけど。今日も__にドタキャンされたし。本当なら今ごろ__とウハウハしてたはず、うん。生理痛とか絶対嘘ナリ。一週間前に生理来たん、俺知ってるんじゃからな。

「で、その女とホテル行ったって有り得なくない!?」
「ブンちゃんも酷いのぉ」

つか男なんじゃから仕方ないじゃろ。俺らだってセフレぜよ。つか自分は良くて男はあかんのか、女ってよう分からんナリ。俺らがやってることも、ブンちゃんと一緒ぜよ。でも一緒は嫌じゃから黙っとく。だって俺、ブンちゃんと違って__っていう可愛い彼女がおるもん。…あいつに浮気されてるわけなか。生理痛じゃなくてアレじゃ、便秘じゃ。たぶん。いや知らんけど。あーなんかむしゃくしゃしてきたぜよ。

「のぉ、もう一回やらん?」

香水臭い身体を抱き寄せれば猫なで声で「雅治ぅ」って呼ばれた。気持ち悪い、吐き気がするぜよ。__はそんな声じゃなか。もっと透き通った声で、なんちゅーか…脳内に響くみたいな?あー萎えた。なんかこいつの声聞いて萎えたぜよ。

「やっぱ止めじゃ」

戸惑う女の手を振りほどいてワイシャツに腕を通した時、電話が掛かって来た。ディスプレイを見たら__じゃった。タイミング悪過ぎぜよ、俺いま浮気中なんじゃけど。

「もしも、」
「あ。やべぇ」

ツーツー、と不通音が鳴り響く中俺はやけに冷静じゃった。着信履歴を見たら、__。間違いなく__から掛かって来た電話のはずじゃけど、電話で喋っていたのは……

「のぉ、ブンちゃんの浮気相手って誰じゃった?」
「え?何よ急に、」
「ええから!!」
「だからぁ、


雅治のクラスメイトの茶髪の…多分、__とかいう子だってば。」

…ブンちゃんの馬鹿野郎。



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