※死ネタ、暗い










「先輩、今何処にいるんスか?」

光は、兎に角束縛が激しかった。一時間おきの着信、授業中も来るメール、極め付けは私の写真を毎日送れ、と言ってきた。ちょっと…、と言葉を濁せば「先輩は俺のこと嫌いなんスか?」と言われるか、浮気を疑われるかの二択だった。それでも光は、別れるとは一度も言わなかった。

「さっき体育で怪我したから、白石と保健室だけど…」
「は?部長と二人だけ、なんスか」
「……うん」

今から行くんで、と言って電話を切る光だが、白石は保健委員だからいるだけであって、別に変な意味はない。今から来るみたい、と白石に言えば彼も苦笑いしていた。

「あいつ、どんだけ__のこと好きやねん」

さぁ、と遠回しに話題を避けようとしたが、白石は「何で付き合ったん?」と更に奥深くまで聞いてきた。

「、え?」
「だから、何で付き合ったん?」

彼は単なる興味本位で聞いているのだろうか、それにしては顔付きがさっきとは違ってどこか怖い。同じ顔のはずなのに、この違和感は、何だろう。「なぁ、何で?」と再度返事を催促する白石の目をよく見れば、彼は笑っていなかった。

「、白石?」

え、どしたん?と彼に笑いかけても、白石はただ無言で私に近付いてきた。「ちょっと、え?なに?」と言っても、彼の歩みは止まることは無かった。窓際まで詰め寄られた時、彼は壁に手を付いて厭らしい笑みで私を見下ろした。その時外から視線を感じたので、何気なく窓に視線を移せば、そこに立っていたのは紛れもない光だった。

「見られてしもたなぁ?」

白石の綺麗な顔が、下臈な笑い方で歪んでいることに、果たして彼は気付いているのだろうか。慌てて保健室から出ようとしたが、扉はピクリともしない。いつの間に、と思った時後ろから窓が割れる音がした。

「部長、何やってんスか」
「…流石に窓は割ったらあかんやろ」

粉々に散った窓ガラスの欠片を拾い上げる白石に、「っ、話逸らすなや!」と大声で叫ぶ光の顔は、今までで一番怖かった。

「まぁ、何って……財前の想像に任せるけどな」

そのまま白石は、隅に置いてあったポリタンクの中身を、自分と床にぶちまけた。この臭い、と直感でその液体がガソリンだと分かった。

「ちょっと、白石、」
「ほんまはこのガスが充満した保健室で__と二人、心中するつもりやったんやけどなあ。財前が窓ガラス割るから最終手段使うな。」
「部長?冗談キツいっスわ」
「冗談?まさか。財前がいつまで経っても俺の__と別れへんからやろ?念のため、って思ってガソリン用意しといて良かったわ」

やっぱ俺、無駄ないやろ?と、そのまま彼は、手に持っていたマッチを床に落とした。








本日昼過ぎ、四天宝寺中学校で火事があり、全焼した保健室の一室から男子生徒二名、女生徒一名、計三名の遺体が発見されました。ガソリンが撒かれた形跡があることから、警察は自殺とみて捜査を進めています。では、次のニュースです。



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