__ちゃんが仁王を好きだ、とか、丸井が隣のクラスの可愛い子に告白された、とか、赤也が街で綺麗なお姉さんに逆ナンされた、とか私にとっては全てどうでもいいことだ。

「へぇ、意外と冷たいんだね」

いつの間にか隣に座っていた幸村に驚いた。っていうか人の思考が分かるとか、どういうこと?幸村ってエスパーなの?

「俺、神の子だからさ」
「……ああ、そう」

それにしても幸村関連の恋バナは、今まで一度も聞いたことがない。あのデータに詳しい柳でさえ「精市の話は聞かないな」と言っていた程だ。幸村の恋バナはトップシークレットなのかも、そんな興味本位で「好きな人はいないの?」と尋ねれば、あっさり「いるよ」と言われた。

「えっ誰?もしかして真田?赤也?」
「今から俺と一緒にテニスでもする?」
「……すみませんでした。」

取り敢えず幸村の殺気が恐かったので直ぐに謝ったが、あれは目が本気だった。間違いなくヤバい(イップスされる)パターンだ。

「逆に__はいないの?もしいたら、そいつ締めるけどね」

急に話を振られて驚いた。幸村を見れば、相変わらずニコニコと頬杖を付いて私を見ていた。

「はっ!?……いない、けど」

もしいたら、犯罪者になる所だった。と言う幸村の目は全く、これっぽっちも、笑ってなかった。内心「厄日だ…」と、そんなことを考えていれば「じゃあ、テニス部で付き合うとしたら、誰がいいんだい?」なんて聞かれて、更に戸惑った。

「…えっと、ジャッ」
「なに?」
「ジャッカ」
「俺だよね?」
「……幸村がいい、かな」

両思いだね、と私の手を取って微笑む幸村に不覚にもキュンとした。…って、は?両思い?思わず幸村を二度見すれば、クラスの皆に聞こえるくらい大きな声で「今日から__は、俺の女だから。」と、満面の笑みで告げていた。…グッバイ、私の青春。

翌日と言わず、その日のうちに全校生徒に広まったのは、言うまでもない。



▽魔王祭り第三段



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