仁王とは仲の良い友人だった。いつから仲が良いとか、きっかけなんて覚えてない。幼なじみのブン太と三人で馬鹿みたいに騒ぐのが、私は好きだった。

「好きなんだけど、お前のこと」

幼なじみのブン太に告白されたのは、全国大会が始まる少し前だった。私も別にブン太は嫌いじゃない、それでも「付き合う」のは抵抗があった。

「は?何でだよい」
「だってさ、ブン太と付き合っちゃったら仁王と三人で馬鹿なことも出来ないじゃん。」

じゃあ仁王には内緒にしようぜい、ブン太の提案に黙って頷けば、私とブン太の関係は、幼なじみから恋人になった。
それからも三人で馬鹿みたいに騒いで、学校では三人一緒が当たり前だった。放課後になればブン太の恋人になる、仁王にバレないよう付き合いだしてから、一ヶ月が経った。


「さようならって意味、知っとる?」

ある日の放課後、珍しく仁王と二人でいた時、あいつは急に変なことを言い出した。仁王に知らない、と言えばクスリと笑われた。じゃあ仁王は知ってるの?と言い返せばあっさり「勿論じゃ」と言われてしまった。

「普通、挨拶でさようならなんて言わんじゃろ。」
「うん、」
「さようならは、永遠の別れに近いくらい深刻なんじゃよ。」

永遠って、大袈裟じゃない?仁王に眼差しを向ければ、真剣な顔付きだった。いつもとは違う、その双眼に思わず引き込まれそうになった。

「…ブンちゃんと、付き合ってるじゃろ?」

苦しそうに呟く仁王に、答えるのを一瞬躊躇った。それでも、引き込まれないよう小さく頷けば、「良かったのぉ」と少し嬉しそうだった。丁度その時、下校のチャイムが鳴ったので慌てて帰ろうとすれば、仁王に引き留められた。

「別れの挨拶くらいしてから帰りんしゃい」
「あっ、ごめん。仁王、バイバイ」

バイバイ、いつも通りの別れの挨拶をすれば仁王は眉を下げながら「、さよならナリ」と小さく呟いた。
その時初めて、仁王の気持ちに気付いた私は馬鹿だ。さよなら、そう呟いた仁王の気持ちを理解出来ない程、子供じゃない。颯爽と私の横を通り過ぎる仁王の背中を見つめながら「さようなら」と私も呟いた。
きっと明日から仁王とは、何の関わりもない、赤の他人になるだろう。そう思えば、少しだけ胸が苦しかった。



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