「なあ跡部。恋人と友達、どっちが長続きすると思う?」
「あ?恋人に決まってんだろーが」
「跡部は分かってないなあ。恋愛はいつか終わりが来るけど、友情に終わりはないねんで」

初めて忍足と出会った時、あいつはそう言った。俺が__を好きなことも、知っているのは忍足と宍戸だけだった。日吉の紹介で知り合った後輩は、どことなく__と似ていた。比べるなんて最低だと思いながらも、__と重ねて接し続ければ、突然その子から告白された。

「ダメ元で言います、私、跡部先輩が好きです」

真剣な目だった。その時初めて、俺は__を重ねずにその子を見た。今にも泣きそうになりながら必死に堪える姿は、僅かに震えていた。

「代わりでもいいです、跡部先輩に好きな人がいるのは知ってます。」
「そんなんお前が辛いだけだろーが」

私、跡部先輩よりズルい女なんです。真っ直ぐ俺を見つめる瞳は濁ってなどいなかった。重ねないよう見ていたが、その目がますます__に似ていた。溢れ出す欲求を無理矢理押し込んで、黙って抱き締めれば自然と「悪ぃ、」と呟いていた。__の顔が頭に浮かんだ気がしたが、この時だけは精一杯目の前の後輩だけを視界に入れるようにした。

「付き合うことになった」

後日__に言えば、直ぐに「嘘だあ」と笑って俺を見た。辛くなって顔を反らせば、俺の反応で察したのか__の顔から笑みが消えた。

「どうせ続かないよ」

今にも泣きそな顔で告げる__に「さあな、」と笑って誤魔化す俺はやっぱりズルいんだ。あれから一年、意外と続いた交際に、忍足からも「ほんま意外やわ」と驚かれた。そして何より意外だったのが、昨日から日吉と__が付き合い出したことだ。
付き合ったらしいじゃねーか、と日吉に問えば、遠慮がちに「…はい」とあいつは答えた。はっ、まさか日吉に越されるなんてな。自嘲気味に「良かったな」なんて言ったが、俺の心は冷えきっていた。俺の気持ちを知らない日吉は、追い討ちを掛けるように残酷な言葉を突き付けた。

「跡部さん、本当は今でも先輩が好きなんじゃないですか。」
「どうして告白、断らなかったんですか」

いっそ日吉に打ち明けてやろうかも考えた。どうせなら「お前より一年長く片思いしてんだよ」と厭味の一つでも言おうか迷ったが、俺にそんな資格は最初から無かった、俺が日吉を責める資格も。
「日吉は、」頭に浮かんだ言葉を打ち消して絞りだした声は、自分でも分かる程弱々しかった。

「……恋人と友達、どっちが長続きすると思う?」

忍足に聞かれたまんまの言葉を、そっくり日吉に問えば、あいつは訳が分からないといった表情をした。

「恋人、なんじゃないですか?」

こいつは昔の俺に似ている。直感的にそう思った。日吉と昔の自分を重ね合わせるように「幸せにな」と言って部室を出た。俺が臆病じゃなかったら、手に入れることだって出来たかもしれねーのに。真っ直ぐ過ぎる今の日吉は、きっと昔の俺自身なんだ。その時初めて、一年前の俺を憎んだ。



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