「ユウジの馬鹿ぁ…」
彼氏である一氏ユウジとは学校が違う。だから滅多にデートなんて出来なくて、明日は久しぶりのデートだったのにユウジと同じテニス部の「小春」と言う子と出掛けるらしい。小春って、どうせ女なんやろ。絶対浮気やわ。
投げ遣りになってユウジを介して友達になった謙也くんと遊ぶことにした。遊ぶって言うても、一緒に映画見に行くだけなんやけど。
「今日ユウジと予定あったんちゃうん?」
「…小春って子と遊ぶんやって」
「あー、あいつら仲良いしな!」
うわ、謙也くんってナチュラルに傷口抉るよな。そうとは知らずにニコニコ笑い掛ける謙也くんに戸惑ってたらギュッと手を握られた。
「はよ行かな良い席取れへんっちゅー話や!」
そのままぐいぐいとチケット売り場まで引っ張られれば、突然反対の手を引っ張られた。痛い痛い、もげるってば。
「お前っ!何で忍足とおんねん!」
「ユウジ?!」
謙也くんもユウジに気付いたんか「お前も映画見に来たんかー」とか呑気に呟いてた。いや、謙也くん分かってないと思うけど、これ修羅場やで。
「ちゃうわ!お前と忍足が手繋いで走るんが見えたから追い掛けて来たんや!俺と小春は向かいのお笑いシアター見に来たんじゃ!ってかお前浮気か、死なすど」
いつも以上にムッとした顔は、明らかに不機嫌オーラが出ていた。怒りたいのはこっちなんやけど!
「ユウジこそ小春とかいう子とデートしてるやん!浮気したんはそっちやろ!」
私、今日のデート楽しみにしてたのに。
そこまで言い終われば自然と涙が出ていた。急に泣き出した私に、ユウジと謙也くんはオロオロし始めた。
「ちゃ、ちゃうねん、小春ってな…」
「ユウくんー、急におらんくなって…って、あれ?」
振り返れば可愛い女の子が……いない?見れば坊主の男の子がこっちに近付いて来た。
「ユウくん女の子泣かしたらあかんやろ!めっ!」
「小春ぅ…」
「初めまして、金色小春ですぅ。よろしゅう。」
…金色小春?えっ、小春って女の子ちゃうかったん?男の子の名前やったん?戸惑いつつ私も名乗れば金色くんに握手を求められた。
「いやぁん、可愛い。ユウくんの彼女さんやんなぁ?」
「あ、はい…」
「ユウくんからいっつも話って言うか、うざいくらい惚気聞いてるでぇ。」
「小春それ今言うたらあかんやろー!」
知らんかった、ユウジが私のことを話してるなんて。てっきり、同じ学校には小春って彼女がいると思って、…ユウジに浮気されてるんやと思ってた自分が恥ずかしい。恥ずかしさと照れ隠しで、少しだけ涙ぐんでしまった。
「ユウジ、ごめんなぁ…」
「お前っ!な、泣くなや!」
「ユウくん女の子泣かしたらあかん言うたやろ!それに、デートあるなら別にお笑いシアターいつでも良かったのに!」
金色くんに咎められてシュンとしたユウジは、こっちを見てボソッと「……悪かった、」とだけ言った。こんなに凹むユウジを見るんは初めてかもしれん。
でも、まぁ、もうちょっとユウジに構ってほしいし、もう少し嘘泣きしとこかな。
***
アンケートにて一氏が読みたいとあったので書いてみましたが撃沈。
ユウジじゃない…だと…。私もユウジ好きです、色々とすみません。