これと一緒のヒロイン










「実は明日、甲斐くんの誕生日なんですよ。」
永四郎から告げられた言葉はあまりにも衝撃的だった。
裕次郎くんは沖縄に来てからの一番最初の友達なんやし、私的に親友やと思ってたんやけど。
思い返せば、最近裕次郎くんはやたらソワソワしていた。
落ち着きがないっちゅーか、部室にある日めくりカレンダーを一時間に一回は見ていた気がする。
…っちゅーかさ、永四郎ももっと早う言うてよ。
時計を見れば夜の十一時をちょっと過ぎたくらい。
今空いてるお店ってコンビニくらいじゃん。
誕生日プレゼントがチロルチョコなんて誰が喜ぶっちゅーねん!

「って訳で、裕次郎くんに何あげたらいいと思う?」
「ヌゥでワンに聞くんさぁー」

凛くんに電話をしたら迷惑そうに返された。
そりゃそうや、夜の十一時半に電話なんてなかなか非常識やっちゅーねん。

「裕次郎くんの欲しいもん、何か知らん?」
「ワンが知っててもヤーに教えるわけないやっしー」
「えー、何でよ」
「………(ヤーを裕次郎に取られたくないさー)」
「りーんーくーん」
「…」
「黙秘権の行使はよろしくないよ」
「裕次郎のプレゼントなんてチロルチョコでいいんさー!」

それだけ言えば電話を切られた。え?結局チロルチョコ?
何と無く腑に落ちないので、永四郎に電話をすればワンコールで切られた。
しつこく五回掛ければ、五回目でやっと電話に出てくれた。

「貴方、一体何時だと思ってるんですか。もうすぐ日付が変わるんですよ。」
「十一時五十分なう。っていうかワンコールで切らんといてよ!さっきまでメールしてた仲やーん」
「明日ゴーヤですからね」
「ゴーヤは勘弁」
「…平古場くんみたいなこと言わないでください。」
「でさ、裕次郎くんの誕生日プレゼントなんやけど。裕次郎くんの欲しいものって何〜?」
「甲斐くんの欲しいもの、ですか?」
「うん」
「物、ではないんですが」
「うん?」
「         」
「……え?」

たっぷり二十秒、時間をおいて返事をすれば既に電話は切られていた。
ビックリした私は、夜中だというのに勢いで裕次郎くんに電話をかけてしまった。

「ゆっ、裕次郎くん!」
「ヌーヤガ?」
「私のこと好きなん?!」
「…なっ、何で知ってるんさー!!」
「ジュンニナー?」
「ヤー、ウチナーグチ話せるんさー?」
「ちょっとだけ覚えてん!って、話題逸らすなし!」

思わず突っ込めば裕次郎くんに、おもいっきりため息を吐かれた。あっ、もう日付変わる五分前やん。

「………ヤーが転校して来た初日にも言うたやっしー」
「えっ?そうなん?」
「鈍ちん、」
「だって!!ウチナーグチで言われても!チューが今日とか分からんもん!」
「じゃあちゃんと言えばいいんさー?」
「……え、」
「俺、__のことが好きやねん」

なっ、初めて裕次郎くんの関西弁聞いた!って、そっちじゃなくて!!!
一人で電話口であたふたしてれば「困らせるつもりは無かったやっしー、ワッサイビーン」と言われて電話を切られた。
時計を見れば、まだ日付は変わっていない。もう一度折り返して電話をすれば電源が切られていた。
裕次郎くんのアホ!!!
そこでふと窓から外を見れば、見慣れた帽子が家の前にいるのが見えた。
急いで階段を掛け降りて(夜中なのは気にしない)玄関を出たら、裕次郎くんが慌てて帰ろうとしていた。

「ま、待って!!!裕次郎くん、誕生日おめでとう!」

多分もう日付は越えただろう、開口一番に言えば、裕次郎くんは照れ臭そうに笑っていた。

「ニフェーデービル、……さっきのは無しにしてほしいんさー」
「なっ何で?」

ぎゅっと胸の辺りが苦しくなったけど、困った様に眉尻を下げる裕次郎くんを見るので精一杯だった。

「気まずくなるのだけはイヤさー」
「ならへん!気まずく、ならへんから!取り消さんといて、」

少し驚いた表情をする裕次郎くんの頬っぺたに、触れるだけのキスをした。夜中だけど分かるくらい裕次郎くんの顔は赤かった。

「返事は、チューでいいんやろ?」

多分、私の顔も真っ赤だと思う。






2012/08/27
裕次郎誕生日おめでとう!!!大好き。
永四郎のお節介のお陰っていう。凛くんドンマイ。



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