※匂いではなく舐めるのがフェチな白石



「なぁ、舐めてええ?」

いつもの様に私の耳元で尋ねる白石は、やっぱり異常なんだと思う。付き合うまでは「白石ってクールでちょっと変な口癖があるけど誰にでも優しくて良い奴だなー」って思ってたのに、付き合いだしてからこいつ頭大丈夫かな、とよく心配するようになった。
手元の雑誌から顔も上げずに「嫌や」と一言告げれば「お臍だけ」と言われた。きっと彼なりの妥協案なのだろう。一般人の私には理解出来ないけど。

「舐めたい」
「嫌や」
「あかん、死んでまう」

知らんし、と内心毒づいたがこのままだと白石のペースに巻き込まれるので聞こえないフリをして雑誌に没頭した。丁度読んでいるページがカップルお悩み相談特集だった。私も、白石のこと相談してみようかな。
彼氏が舐めたがりです、どうすればいいですか?…ダメだ。絶対ネタだと思われて、はい終了ってオチが見え見えだ。白石が正常に戻るまで見守ろう。そうだ、それが一番だ。

(彼氏はシャンプーの匂いが好きなのですが、私は香水が大好きです。どうすればいいですか?)
私もこんなことで悩んだことがあったな。付き合った当初は白石に合わせて香水を我慢してたっけ、懐かしい。でも実は匂いフェチじゃなくて、舐めたがりなんてあの時は知らなかった。そのお陰?で今は我慢せず香水を付けれる、と言ってもシャンプーの香りがする香水を使っているんだけれど。

(彼氏の友達が最近気になります。でも彼氏も大好きです。どうすればいいですか?)
次の質問を見てびっくりした。どうすればいいですか、って…浮気じゃん。分かりやすく例えたら私が謙也くんにキュンてするってことだよね、まぁ絶対無いけど。「こいつ、わがままなやつやなぁ。そんなんされたらたまらんわ」と質問を指差しながら白石は呟いた。私も、そう思う。

「なぁ、眼球見てたら舐めたくなった」

隣で白石が何か言ったような気もするけど気のせいだと信じて、またペラペラと雑誌を捲れば遂に白石に取り上げられた。

「あっ、まだ途中やねんけど」
「俺まだ眼球舐めてへん」
「…眼球はあかん、嫌。」
「何で」

何で、って…何処の世界に喜んで自分の眼球を舐めさせる子がいるんか逆に聞きたいわ。第一眼球は舐める場所やないと思う。

「…怖い、もん」
「ほな、瞼の上から」
「えええ…」

ええやん、な?と伏し目がちに聞く白石は、私がこうされると弱いことを知っててやるから余計質が悪い。少し眉を潜めて尋ねる白石に罪悪感を感じるのは、彼の醸しだす雰囲気からなのだろうか。

「…瞼の上から、ならええよ」
「おおきに」

ほな早速、と愛おしそうに瞼の上から眼球を舐める白石に、少し戸惑いながらも受け入れた。べったりと瞼全体を舐めたり、時々睫毛の生え際ギリギリをペロペロと舐める彼に、不思議と嫌悪感は無かった。暫く舐められた後、動きが止まったので終わったと思い目を開けば、死角から不意にペロリと直接眼球を舐められた。

「ひゃ?!」
「んー、絶頂」

白石を睨めば悪気がないのか、もう一回舐めさせて、と頼みおる。
「瞼の上からって、」
「堪忍なー。__の眼球が誘うから」

は?、白石もついに頭が湧いたのだろうか。あれ、可笑しいのは前からか。悪化、そうだ悪化している。これじゃ悪循環ではないか。

「なぁ、もう一回」
「しね」
「__の眼球舐めるん、最高に絶頂やねん」

…あれ、何で私こんなやつと付き合ってるんやろう。



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