ヒュウ、と苦しそうに私の気管が悲鳴を上げれば、それを見た彼は、至極嬉しそうに微笑んだ。

「苦しいか?」

わざとらしく尋ねる白石に目で応えれば、満足そうに頷くだけだった。酸素が足りない、頭が回らない、…私、死ぬのかな。
そこまで考えた時、首の威圧感がフッと消えた。変わりに彼の唇が私に押し付けられた。まだボーッとする脳ミソは靄がかかったように動かない。されるがまま流されれば、いつの間にか舌まで入れられた。いっそ白石の舌を噛んでやろうか、なんて考えが頭を過ったところで彼は私から舌を抜いた。

「どうやった?」
「………最悪」

それは良かった、なんて噛み合わない会話に意味はない。あくまで白石の自己満足なのだ。そこに私の意志など含まれるわけもない。彼の欲望が第一、私はあくまで白石を満足させる為だけに存在している。

「俺な、お前が好きすぎて死にそうやねん」
「へぇ、」
「いつか殺してしまうかもしれんわ」
「あっそう」

でも私は知っている。彼はいつもギリギリでやめることを。白石は無意識にリミッターをかけているのだ。それが彼の唯一残った良心なのかもしれない。その良心が消える時、きっと私は白石の手で殺されるだろう。彼によって。
白石の性癖は異常だった。別に性癖が異常だから嫌いという訳ではない。ある時、脚を舐めたいと言われ容認すれば次第にエスカレートしていった。
脚、脇、手、秘部、お腹、臍、耳、最終的に眼球を舐めたいと言われた時は流石に戸惑った。
それでも彼に押されてしまい、今は白石の言いなりになってしまった。
そのうち彼は殺人未遂の域までいってしまった。最近は首を締めるのは日常茶飯事。酷い時は果物ナイフを持ち出す時もある。この行為を繰り返す白石は、やっぱり狂っていると思う。歪んだ彼の愛情表現を、最初は理解出来なかったが慣れとは怖いものだ。また明日同じことを繰り返すのかと思えば、思わずゾッとした。


たまたまテレビを付ければ預言者が「2XXX年人類は絶滅する」など適当なことを言っていた。どうでもいい、それが率直な感想だった。第一、2XXX年まで生きているとは思えない。その歳まで生きていたら間違いなくギネス記録だろう。
しかし白石はテレビから目を離さずジッと見つめていた。不意に手を握られたかと思えば、そのまま抱き締められた。

「もし明日地球が滅びるなら、」

「俺はお前が地球に殺される前に、殺しに行くで」

嗚呼、彼はこういう人なのだ。





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