「謙也、来週の土曜日って空いてるー?」

もうすぐ付き合って半年、絶好調にラブラブな俺の彼女からデートの誘いがあったのは先週のこと。
夏休み真っ只中で、丁度部活も無かった俺は勿論断るわけもなく二つ返事で了承したわけ、なんやけど…。

「かっ飛ばせー水野ー!ホームランやー!」
「って、なんで甲子園やねん!」

朝早くから連れ出され着いた場所は甲子園球場。
しかも彼女の要望でアルプス席、知らん学校の応援団に混じって座ってる。
いや、俺テニス部なんやけど……。

「やっぱ高校野球は最高やな」
「えっ、俺テニス部……」

俺の呟きは虚しくも応援に掻き消された。ってか何やねん。
俺の試合見に来たことないくせに、何で知らん奴の応援してんねんこいつ!
俺と高校球児、どっちが大切やねんっちゅー話や!

「謙也!本番はツーアウトからやで!」
一試合目の五回表で早くも既に飽きた俺に、熱心に解説してくれるんやけど、時折「水野くんナイスプレー!」やら「かっ飛ばせー水野ー!」やら他の男を応援するんが気に入らん。
ってか水野って誰やねん!
…男の嫉妬は見苦しいっちゅー話や。

「…なぁ」
「あぁー、惜しい!惜しいわ!ドンマイドンマイ!」
「なぁ、」
「水野〜、ボールよく見て!」
「__〜?」
「水野あかーん!今のはボールやっちゅーねん!」
「おーい」
「あー!折角ツーアウト二塁やったのに!」

…あかん、俺拗ねてまいそうやわ。
ちゅーかほんまにさっきから水野水野水野って、お前の彼氏は水野やなくて忍足やろ!

「けーんやっ、ちゃんと見てる?」
「………」
「謙也くーん?」
「………」
「謙也謙也謙也謙也謙也謙也謙也謙也謙也謙也」
「あー!何やねん!聞こえてるっちゅーねん!」
「じゃあ無視すんなし」
「…………やんか」
「へっ?なに?」
「さっきから名前呼ぶん、水野ばっかやんかいな!お前の彼氏は誰やっちゅー話やねん!」

少し気まずそうに__から目を逸らせばギュッと手を握られた。

「…謙也、拗ねてたん?」
「わっ、わわ悪いか!たまには妬くっちゅーねん!」

半ばやけくそに叫べばどもってしもた。最悪や、俺めっちゃカッコ悪。
スッと立ち上がった__は何処かに行ってしもた。
あかん、終わった。完璧に振られる。
俺もしかしたら立ち直れへんかもしれん。
甲子園で振られたとか知られたら、白石と財前(特に財前)に笑われそうや。
ってかほんまに何処行ったんや、あいつ!
気になって辺りを見渡しても人多過ぎて分からんっちゅー話や!
落胆して下を向けば真横から__の声が聞こえてきた。

「けーんや」
「おま!ど、何処行ってたんや!」
「はい、」

__から渡されたのは、かち割り。

「熱中症なってまうで」
「…お、おん」
「それから…うちが水野くんばっか応援してるんは、水野くんの名前"ケンヤ"やからやで」
「!」
「うちには謙也だけやっちゅー話や!」
「__…」
「帰りさ、神戸でデートしようや。プリクラ撮ろ、プリクラ」
「お、おう!」

ま、たまには高校野球も悪くないっちゅー話や!





(謙也さん、デートで甲子園とか趣味悪いっスわ)
(は、何で財前が知ってんねん。)
(アルプス席、テレビでばっちり映ってたっスわ)
(…あぁ、それでか。ま、帰りは神戸でデートしたけどな!あっ、ちゅープリ見るか?)
(いやいいっス)
(ほれ見てみぃ財前!どや、羨ましいやろ!)
(…ウザいっスわ。)











夏なので甲子園ネタを。
今年も甲子園に行きます。
今年は開会式見に行くので、
今から死ぬほど楽しみです(笑)


※水野ケンヤくんは仮名です



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