テニスコートに向かうはずだった足は、いつの間にか光と最初に出会った図書室に向かっていた。
閉まっていると思ったが、意外と利用者がいると見込んでか開いていた。
静かに入れば、いつも光が座っているカウンターを自然と見てしまった。

「………光、」

光が座っているように同じように座れば、一枚だけ不自然に飛び出ているカードが目に付いた。
不思議に思って引いてみれば、それは紛れもなく私のカードだった。
卒業する三年のカードは昨日で全て処分することに決まっている。
それなのに此処にカードがあるということは、きっと光が私のカードだけ除けといたからだろう。
今まで借りた本も記録されているカードが懐かしくなって裏面を見れば、ぶっきらぼうな字で「卒業おめでとうございます」と書いてあった。

「……光のアホ。」

言葉に出来ない想いが込み上げてきて、図書室を飛び出した。
そのままテニスコートまで走れば丁度光と謙也の試合が始まるところだった。
様々な女子の歓声が飛び交う中、誰にも負けへんくらいおもいっきり大声で叫んだ。

「光が勝ったら、付き合ってあげてもええよ!」

光は一瞬こっちを見たけれど、すぐに無言でサーブを打った。

"15ー0"

「そんなん、勝つに決まってるやないですか」
不敵に笑う光は、今まで見た中で一番格好良かった。












(先輩、もし俺が負けてたら振ってたんスか)
(もし負けてたら…んー、私から告白してたかなー)
(…負けとけば良かったっスわ)



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