「ねぇ、なにこれ」
記念すべき幸村の退院祝いに私があげたプレゼントは、モケケのキーホルダー。
ちなみに私と色違いで、お互いのモケケをくっつけたらハートマークになるという、いかにもカップルが好きそうなキーホルダーである。
「モケケだよ」
「今の言い方……某ジブリのメイちゃんみたいだね」
「は?」
幸村って、ジブリ見るっけ。と聞けば金曜ロードショーでたまたま見た、と言われた。
「でさ、なんでこれなの」
「可愛いでしょ」
「本当、趣味悪いよね」
丸井はケーキ作ってくれたし、真田はタオル、柳はグリップテープ、赤也はテニスボール、ジャッカルはリストバンド、柳生は花の種、仁王は……
「仁王は?」
「聞きたい?まぁどうせ夜に使うけど」
「いやいいです、いりません結構です」
「ふふ、みんな実用的なものくれたのに……君のプレゼントは?」
「………モケケ、です」
蚊のなくような声で答えれば幸村は満足そうに頷いた。
「ねぇ、他にあるんでしょ?あるならさっさと出してほしいんだけど」
スッと右手を差し出す幸村を見れば早く出せよと言わんばかりの黒いオーラが出てた。
えっ、なにこの新手の恐喝。物凄く怖いんだけど。
「えっと…あるのは、あるんだけど…」
さり気なく視線を逸らせばグイッと顔を掴まれ、(無理矢理)幸村の方に向かされた。
「俺、あんまり気は長くないんだけど」
「………スミマセン」
そっとポケットからミサンガを出せば幸村は嬉しそうに受け取ってくれた。
「なんでこっちを先に出さないの」
「えっと、あー…間違えて」
黄色と白を基調にしたミサンガは、夜中に睡魔と戦いながら作ったせいで、途中で編み方を間違えてしまい、最後の方はぐちゃぐちゃなのだ。
「ぐちゃぐちゃでごめん…」
「馬鹿だなぁ、そんなこと気にしないのに。ふふ、ミサンガがあれば三連覇、出来る気がするよ」
「…うん。」
「モケケもテニスバッグに付けるからさ」
「うん、」
「__も鞄に付けてね」
「えへへ、お揃いだー」
嬉しくなって幸村に抱き付けば、逆に抱き締められた。
「…いつもありがとう」
「私なにもしてないよ?」
「俺がまたコートに立てるのも__のお陰だよ。俺だけじゃ無理だった」
「…ん、それ言うならみんなのお陰」
そうだね、と笑う幸村は前よりもずっと格好良くなっていた。