※男主(財前の弟)



「兄貴、俺もピアス開けたい」
部活が終わって家に帰れば、弟がそんなことを言い出した。

「は、お前には早いわ」
「兄貴も開けてるやん。俺も開けたいし兄貴が開けてーや。開けるん慣れてるやろ?」

あっちなみに此処、って右耳を触りながらピアッサーを差し出された。
こんなもんいつ買ってん、と聞けば「兄貴のパチった」と悪怯れる様子もなく平然と言いおる。
金ちゃんと同じ学年の弟は、校内でもなかなか有名や。
そのほとんどが「天才財前光くんの弟」というレッテルであって、あいつ自身じゃない。
それが嫌なんか知らんけど、最近謙也さんと同じ髪色になった。
本人に聞いたら、一緒にブリーチしたらしい。
ブリーチは髪の毛痛むさかいやめとけ、と注意すれば笑って誤魔化された。
黒髪もなかなか似合ってたのにな。

「…いつからそんな不良になったんや」
「兄貴も十分不良や!なっ、早く開けてーな!」

弟に急かされる様に部屋に入れば、期待に満ち溢れた目でこっちを見てきおった。

「兄貴!冷やした方がええ?」
「まぁ、出来たら。…慣れたら対して変わらんけどな」

じゃあ一応冷やすわ!と慌ただしく部屋を出て行ったと思えばすぐに保冷剤片手に戻って来た。

「兄貴は何でピアス開けたん?」

右耳を保冷剤で冷やしてる間に雑談しとったら不意にそんなことを聞かれた。

「まぁ、開けたかったし」
「うわー、不良ー」

ケラケラと笑いながら耳を擦れば「もーええかな」と言って俺にピアッサーを委ねた。

「じゃあ開けるで」
「ん、」

緊張してんのか、こいつは目を開けたまま微動だにせん。

「目、つぶった方がええで」

少しでも恐怖心を和らげようと、金色の髪の毛を撫でれば大人しく目をつぶった。



バチン、



ピアッサー独特の大袈裟な音が鳴れば、弟は薄ら目を開いて手鏡を覗きこんだ。

「おー!開いてる開いてる!」
「痛くないか?」
「ん、平気やー」

自分以外にピアス開けたんとか初めてやし、出来れば弟には開けてほしく無かったんやけど。
嬉しそうに右耳に付いているピアスを触りながら「全然余裕やったわー」とか言ってるこいつに、絶対俺の心臓の音は聞こえてない。
人の気も知らずに透かした顔でピアスを弄る弟に、無性にムカついて髪の毛を掻き回したった。
こっちは心臓バクバクやっちゅーねん。

「兄貴!セット崩れる!」
「うるさい」

「あーっもう!兄貴のせいで髪の毛ボサボサやわ!」と嘆く弟を横目に小さくため息を吐けば、その頃には心臓のドキドキも収まってた。
開けたての右耳のピアスを弄りながら「兄貴、ほんまありがとう!」とごっつ嬉しそうに笑う弟を見たら、ピアスのことも髪色のことも何も言えんくなった。
段々大人っぽくなっていく弟に、たまにドキッとする。
俺みたいに無愛想と違うし、どっちかというと謙也さんみたいな感じやし。

何でか分からんけど、ごっつ弟が可愛く思えて頭を撫でたら「あっ、折角直したのに!またボサボサになるやろ!」と怒られた。
まぁ、弟の面倒見るんもなかなか悪くないっスわ。





――――――――――――――――
家族。様に提出
最初はユウジを予定してましたが今日は財前の誕生日なので!誕生日おめでとう!
財前はなんやかんやで面倒見がいいと思います(笑)

素敵な企画に参加させて頂きました。
ありがとうございました。


以下おまけ



翌日学校に行けば謙也さんに「財前!弟ついにピアス開けたなぁー!」と話かけられた。

「何で謙也さんが知ってるんスか」
「えっ、開けた理由あいつから聞いてないんか?」
「何なんスか」
「お前の弟なぁ、財前が右耳は2つしか空いてないから俺が右耳に1つ開けたら兄貴と足して左右3つずつになんねん!って理由で開けたんやでー。ほんま可愛い奴やなー!お前とは大違いやっちゅー話や!」
「……うっさいっスわ」

帰ったらあいつに俺のお古のピアスをあげようと思った。



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