今日はいつもより早く起きたので、朝練の前にコンビニに寄って新発売のお菓子を買ってから学校に行った。
朝練が終わり、部室でダベっている時に今朝買ったばかりのお菓子のことを思い出して取り出せば、早速ブン太が食い付いた。

「それ、新発売のやつじゃねーかよぃ!」
「さっすがブンちゃん。お菓子の情報は早いのぉー」
「当たり前だろぃ?つーことで一つくれよぃ」

半ば無理矢理お菓子を横取りされたけど、そこで怒るほど私もガキじゃない。
「仁王も食べる?」と大人の余裕ってものをブン太に見せ付けた。(だって取られっぱなしも癪だもん)

仁王もニコニコしながら「じゃあ頂くナリ」と万更でもなさそうだった。
口を開けたまま動かない仁王に仕方なく口元までお菓子を持って行けば、そのまま指ごと食べられた。
思わずパクッ、て効果音が付きそうな感じで。

「!ちょ、仁王っ」
「ごちそーさん」

妙に色っぽく舌なめずりをして目を細めて笑うこいつは確実に確信犯だ。
隣にいるブン太を盗み見すれば、まるで気にしていないかのようにガムを噛み携帯を弄っていた。

「ねぇ、そろそろ行かないと授業に遅れるよ」

少し急かすように幸村くんが言うので、慌てて鞄を持って部室を出た。
ブン太と仁王とはクラスが違うので、いつもなら階段で別れるのだが今日はブン太に腕を引っ張られたので必然的に一限目はサボることになった。
グイグイと腕を引っ張られて着いた場所は家庭科室だった。

「ブン太、鍵持ってるの?」
「当たり前だろぃ」

スペアを取り出し、出来るだけ音を立てないように入ればきっちり後ろ手で鍵を掛けられた。
必然的に、密室である。

「……怒ってる?」
「当たり前だろぃ!浮気してんじゃねーよ」
「してないってば、」
「してただろい」

してない、いやしてた、だからしてないって…その繰り返しが暫く続けばブン太が諦めたかのように盛大なため息をついた。
ため息つきたいのはこっちだっつーの。

「…あのさぁ、お前わざとなの?」
「は?」
「だからよ、そのー…なんつーか」
「……何よ」
「あーっ!あんま俺を妬かせんじゃねーよ!」

顔を真っ赤にしながら照れ臭そうに「お前は隙ありすぎるんだよい」と頭を掻きむしっていた。
ブン太の頭を撫でながらごめんちゃい、と謝れば「お前からキスしてくれたら許す。あっ勿論ディープで」とか言うので、とりあえず鳩尾に一発かましてやった。






(ぐっ、お前、本気で、)
(真田の鉄拳よりマシでしょ)
(……容赦ねぇ)



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