Luv Fes様に提出。



仁王は誰にでも好きだ、と言う。つまり言い方を変えれば女たらしな訳だ。そんなんだから、勘違いした女がいっぱい寄って来る。

「好いとうよ」

ほら、また彼女である私の前で堂々と浮気。こっちを見ながら言うもんだから、余計タチが悪い。

「雅治、私も好き」

バサバサの睫毛に、気持ち悪いくらい塗りたくったリップを仁王に近付ける女に吐き気がした。
私はそのまま屋上にいるブン太の元まで走った。ブン太はいつものようにガムを噛みながら寝転がっていた。

「ブーンちゃん、」

ブン太の顔を覗き込めば、バッチリ目があった。

「っ、ビックリした。」
「それはこっちの台詞だっつーの」

そのままゆっくりと起き上がるブン太をじーっと見つめれば「なっなんだよい。あっ、ガムならやらねーぞい!」と言われてしまった。お前どんだけがっついてるんだよ。

「飴あげるから相談乗ってよ。」
「どーせ仁王のことだろい」
「流石天才」

一瞬で分かるブン太はエスパーなのかな、と思ったけれどよくよく考えたらここ最近は仁王のことしか話していない事に気が付いた。やっぱり前言撤回。ブン太に飴を一個差し出せば「レモン味かよい…」とあからさまに不満そうだった。

「さっきも女の子口説いててさー、あいつ」
「いつものことだろい、…てかイチゴ味ねーの?」
「ない、食べた。そうだけどムカつく」
「チッ、……じゃあお前も浮気してみろよい」

投げ遣りなブン太の回答は私の思考を停止させた。浮気、そんなこと考えたこともなかった。でもやられっぱなしは性に合わない。

「ナイス、ブン太。ってことで私と浮気しようよ」

一瞬戸惑った様だったが、またすぐにいつもの表情に戻り「やっぱ俺って天才的?」とニヒルに笑って私の上に跨った。

それから一週間も経たないうちに立海テニス部レギュラー全員と関係を持った。ぶっちゃけ、真田は無理だと思ったけれど案外あっさり乗ってくれた。仁王と同様、目の前で堂々と幸村に抱き合ったりわざとブン太とキスしたりした。そんなことを続ければ、勿論私と仁王が別れたという噂が流れ始めた。仁王の浮気相手何人かに「別れたの?」と聞かれたので「さぁ?」と答えれば「自然消滅ってわけね、」と勝手に解釈された。別れたらしい、と噂が広まって一週間後、仁王に呼び出された。

「お前さんどういうつもりじゃ」
「…なにが、」
「そんなに俺と別れたかったんか」

今まで散々浮気してきたくせに、よく言うわ。私が黙ったままでいれば突然抱き締められた。

「頼むから、見捨てんといて」

いつもの仁王らしくない弱々しい声で吐き出す台詞に驚いた。仁王が人に弱いところを見せるなんて、ペアの柳生ですら見たことが無いと思う。

「…ごめん、やりすぎた。」

とてもじゃないが仁王の浮気を咎めることは出来なかった。私って結局仁王に甘いんだな。その後仁王と仲直りをして教室に戻る時、偶々廊下で柳生と擦れ違った。

「あっ、柳生」
「おや、仁王くんと仲直りしたんですか?」
「うん、」
「良かったですね」

優しく笑う柳生に少し違和感を感じた。もやもやとした感情は段々嫌な予感に変わっていった。
…あれ、何で柳生が仲直りのこと知ってるんだろう。それに、仁王から呼び出されたことも誰にも言ってないのに。
私の横を颯爽と通り過ぎた柳生の方を振り返れば、そこには見慣れた銀髪の男がいた。


「プリッ」



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -