男ってほんと馬鹿。


そう思ったのは中学生になってからだ。きっかけは体育の水泳授業、男女が向かい合って座れば、正面から突き刺さるような視線。男子たちは皆、クラス1巨乳のキョウコちゃんを見ていた。キョウコちゃんは私の隣なので必然的に私も視線を感じる。きっと彼らは、私のまな板みたいな胸に興味はないのだろうけど。
小学生の頃はセックスのセの字も知らなかった。精子ってなぁに?と純粋に大人に聞けるくらい、無垢だったのだ。中学生になって性の意味を知った途端、周りはみな大人の階段を登りはじめた。
初体験もう終わったー?
私まだなんだけどー。
えー嘘信じらんない。
次々とクラスの女子たちは、あっけなく貫通式を遂げるのであった。そして同じように、男子も性に耽り始めた。


中学三年になった頃、後輩である長太郎と周りから付き合ってるの?と聞かれるほど仲良くなった。しかし付き合ってるというより、私が一方的に可愛がっていたら彼も懐いてくれた、いわば飼い犬と飼い主のような関係だと思う。いつものように部活帰りに長太郎の家に遊びに行った時、たまたまベッドの下からエロいDVDを見つけた。長太郎もこういうものを見るのか〜ってしみじみ感傷に浸っていれば「先輩なに見てるんですか!」と滅多に慌てない彼が必死になって隠そうとした。


「なにって、ナニが?」


からかわないでください!と顔を真っ赤にさせふるふると震える彼はまるで犬のようにかわいらしい。ごめんごめん、と笑ってDVDを返せばすぐに机の中にしまっていた。ベッドの下じゃなくていいの?と聞いても彼は無言のままわたしの隣に座った。
怒ってる?
別に怒ってないです。
本当?
本当に怒ってないですから勝手に見ないでください!
やっぱ怒ってるじゃん。
だから怒ってないですってば!
そんなやり取りをしているうちに日はどっぷりと暮れ、外はカラスのように濁った色に変っていた。じゃあそろそろ帰るね、なんて荷物を持とうとすれば横からグイッと袖を掴まれた。どうしたの?と聞いても彼はただ黙り込むだけだ。ふと何気なく彼の視線を辿れば、それはまっすぐと私の胸に向かっていた。…まさか。嫌な予感は案外当たるもので、今日親帰るの遅いんですよ。といつもとは違う笑顔で長太郎は言う。へぇ、そうなんだ。と素知らぬ顔で相槌を打てば、いいですよね?と言わんばかりに彼は私の服の中に手を入れた。



必死に腰を振って、先輩、先輩。と吠えるように叫ぶ彼を、わたしはただただリズムに合わせて喘ぐ振りをした。そうだ、明日学校に行ったら皆に言わないと。わたしも貫通式したんだよって。でもこんな話今更すぎるかなぁ、なんて頭の隅っこではそんなことばかり考えていた。セックスってこんなもんなんだ。思っていたより呆気ない感じ。あーあ、こんな犬早く逝っちゃえばいいのに。


水泳の授業での男子たちのあの突き刺さるような淫靡な視線は、しばらく忘れられそうにない。



20140118
かなり早いけど長太郎ハッピーバースデー
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