※完璧おふざけ・そして時代に乗り遅れた感



「今でしょ!」

突然幸村が部活中に今でしょ!とか言い出した。一体何が今なのだ、大体あれは前置詞として「いつやるの?」というフレーズが必要である。完璧にCMの見すぎだろあいつ。私だけじゃなく柳までもがポカンとしている。そんな中真田が「何がだ?」とか糞真面目に聞き返してたけど、テレビをもっと見ろ。

「そろそろ全国大会だから、レギュラーも気を引き締める為に何かを断たなきゃいけない気がするんだ。じゃあいつやるの?今でしょ?今しかないじゃん」

幸村がそこまで言ってようやく言いたいことが分かった。つまり全国大会まで好きなものを断ついわゆる願掛けをしようと彼は言いたかったのだ。分かりにくいにも程がある。

「む、しかし」

真田がなにか言いたそうな顔をしていたが幸村の眼力に負けて黙ってしまった。そこは頑張って反論しろよお前…。嫌な予感しかしない幸村の提案に、丸井は顔を真っ青にして隣のジャッカルの脇腹をつついていた。ジャッカルお前幸村くんに言ってくれよぃ、と小声で訴えかける丸井だがジャッカルは聞こえないフリをして無反応である。仕方ないここはマネージャーである私が幸村に言ってやろう、これで丸井に貸し1

「幸村、あのさ」
「なんだい?」

なにお前俺の提案に文句あるわけ?喧嘩売ってるの?ちょっと部室で二人でゆっくり話し合おうか。
幸村の目がそう言っていたので私はおとなしく黙った。やっぱり幸村には逆らうべきじゃない。黙り込む私に丸井から痛いくらい視線を感じたけれどジャッカルと同じく無視することにした。

「そうだね、みんなの好きなものって何だろうね」

言い出しっぺのくせに今更考え込む幸村を見てため息を吐きたくなった。考えてなかったのかよ…。お菓子じゃろ、と揚々と提案する仁王だけどそれが好きなのは丸井だけである。じゃあ勉強っすね!と嬉しそうに手を挙げる赤也は真田の一睨みですぐに黙った。うーん、と真面目に首をかしげる柳生だけどそこまで真剣に考える必要はないと思う。

「やはり皆の好きなものと言えばテニスだろう」

至って正論を述べる柳に対して、それだけは嫌だ!とまるで駄々を捏ねる子供のように幸村は反発した。確かに病み上がりの幸村にとって、テニスを取られるのは本当に辛いだろう。じゃあ好きなモノを絶つなんて言わなければいいのに。小さく呟いた私の独り言を彼は聞き逃すわけがなかった。

「誰のために言ったと思ってるんだよ」

三連覇して、お前に笑ってほしいからだろ。照れ隠しからか、ぶっきらぼうに早口で言う幸村の頬はまるで丸井の髪のように真っ赤だった。わたしのため、そんなこと全く思わなかった。てっきり、今流行りのあのCMの真似をしたいだけだと思っていた。

「いちいち俺に言わせるなよ、バーカ」

八つ当たりのように赤也の肩を突きながら、ジャージを羽織ってコートに向かう幸村にわたしたちは慌ててついて行った。「好きなモノを絶たなくても、俺たちが負けるわけねーだろぃ!」前を歩く幸村に大きな声でそう叫ぶ丸井に続いて、赤也も真田も柳生も、みんな必死になって叫んでいた。

「そうだよ、幸村が戻ってきたんだもん。立海が負けるわけないじゃない」

馬鹿は幸村の方だよ、立ち止まって後ろを振り返った幸村は私たちを見て今にも泣きそうな顔で頷いていた。


20130501
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