※全然かっこよくない白石ですごめんなさい



白石蔵ノ介を、あなたはどう思いますか?

格好良い?みんなに優しい?無駄を嫌うクールな人?それとも王子様?
それも有りだけれど、おそらく半分以上の人が「何でも出来る完璧人間だ」と言うだろう。わたしは白石くんみたいに器用じゃない。不器用で、口下手で、上手く感情を伝えられなくて……損な性格だと、自分でも思う。

「自分そんなことないやろ。ちゃんと嫌なことは嫌って言うてるし、人の為に一生懸命やってるやん」
「…うちは、白石くんみたいに器用ちゃう」
「俺も器用ちゃうわ。」

哀しそうに笑う白石くんは、どこか儚く見えた。それから私たちは、一度も会話しないまま三年間の中学校生活を終えようとしていた。今日は卒業式。おそらくもう、白石くんと話すことも、彼の顔を見ることも無いだろう。白石くんがどこに進学したかは知らないけれど、たくさん来ていたスポーツ推薦ではなく、皆と同じ高校受験をしていたことだけ知っている。やっぱり白石くんは、完璧人間だと思った。

皆が泣くのを堪えて校歌斉唱している中、白石くんの口元だけ動きが違った。口パクだ、と直感的に思った。しかし隣の佐々木くんや、白石くんを見つめている女生徒は全く気付いていない。少しだけ、優越感に浸れた気がした。
答辞は勿論白石くんだ。だけど、その答辞にも違和感を感じた。ああ、よく見たら答辞の紙が逆さまじゃないか。目の前の校長も、近くにいる教頭も、保護者どころか私以外の生徒も気付いていない。じゃあ今話している答辞は、彼が必死に暗記した答辞なのか。多少はアドリブも加えているかもしれないけど、やっぱり白石くんは器用だと思った。
卒業証書授与の時も、白石くんにどこか違和感を感じたけれど、それはどこか分からなかった。卒業生退場の時、みんなは白石くんに釘付けだった。見納め、そんな気持ちでわたしも白石くんをしっかり目に焼き付けておいた。教室に戻って、ホームルームが終われば早速忍足くんが、最後やから打ち上げしよーや!と提案していた。ぎゃーぎゃー騒がしくみんなが移動する中、わたしは白石くんに呼び止められた。

「ちょっと、ええ?」
「う、うん…」

そのまま校門とは反対方向にぐんぐん歩いて行き、離れの倉庫に辿り着いた時、彼は汗だくだった。今日はそんなに暑くない気がするけれど、

「あ、あんな、自分ほらアレ、あれやんか」

えっ、白石くんってこんなに挙動不審に話す人だっけ?こんなに吃る人だっけ?、え?

「や、あの俺…ってちゃうねんそうやなくて、」
「白石くん、緊張してる?」
「してへんしてへん!ちゃうねん暑くて!あっほら俺汗びっしょりやろ!!」
「…」
「あの、うん!式中気付いてたやろ!!」
「えっと、口パクのこと?」
「……それもあるけど」
「答辞の紙?」

そっち!と嬉しそうに目を輝かせる白石くんだけど、全く意味が分からん。目の前にいるこの人は、本当にあの「格好良くてクールな王子様の白石くん」なのだろうか?もしかしたらこれは悪い夢かもしれない、試しに白石くんの左手を掴めば硬かった。急に手を掴んだわたしを見て、彼は顔を真っ赤にさせていた。どうやらこれは、夢じゃないみたいだ。

「え、!!??なん、なにしてるん自分!?」
「ごめんなさい気にしないで話を続けて下さい」
「うん?でな、その、前話してたやんか、俺が器用とかその…」
「うん」
「俺な、全然器用ちゃうねん。どうやってなまえさん呼び出そうかとか、どうやって告白しようかとか、ずっと式ん時考えててん」
「え、っと、ちょっと待って、ごめん頭が着いて行かないんだけど」

戸惑うわたしを見て、白石くんはあからさまに「やってもうた!」とうなだれていた。呼び出して、告白…?白石くんが、私に??そりゃ嬉しい、けど。白石くんに何てフォローしようか迷っていた時、急に白石くんは起き上がり叫び出した。

「っていうわけで俺と付き合ってください!!」
「えっ、はい喜んで…」
「ほんまに?ほんまにええん?」
「私で良ければ……」

よっしゃ!と叫ぶ白石くんだけれど、頼むから私の手を道連れにぶんぶんと上下に振るのは辞めて頂きたい。そう言えば一つ引っ掛かっていることがある。思い切って聞いてみれば、白石くんは恥ずかしがりながら打ち明けてくれた。



「卒業証書授与の時に気付いてんけどな、前チャック全開やってん」

この人、ただのアホや。



130304
title 衛星
皆さんご卒業おめでとうございます。
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