※新開が好きなモブ視点でバッドエンディングの続き。完全に好みが分かれると思うので気になる方だけどうぞ!
【新開くんとなまえはデキテイル】という噂は、ハコガクじゃ知らない人は居ないほど有名だ。噂に疎そうな福富くんでさえ知っているのだから驚きである。でも、噂は独り歩きしてしまうもので、そのうち【なまえが新開くんをたぶらかした】【なまえは新開くんの性欲処理】なんて言われ始めた。
「最近変な目で見られる」
なまえは困惑した顔でそう言った。ええ、そうなの?と適当に合わせれば「それに避けられてる気もする」と彼女は眉をしかめた。言いたい放題言われてるからね、とは流石に言えなかった。
きっと周りからしたら私も、「どうして一緒にいるのに本人に伝えないの?あの友達サイテー」と思われているに違いない。サイテーでもいい。だってなまえと一緒にいたら、
「やぁ。この参考書、なまえに渡しといてくれないか?」
「うん、いいよ。」
新開くんと、話せるから。本来フツーに過ごしていれば、アウトオブ眼中な私でも、彼女の友達ってだけでこんなにも素敵なおこぼれが貰える。話せるだけでも、ワタシは嬉しいし幸せだ。こんな不純すぎる動機で彼女の友達をしていると言えば、彼女は悲しむだろうか。それとも怒るだうか。それでもいい、わたしは恋愛と友情なら恋愛を取る人間だから。
そんな彼女に変化が訪れたのは最近だ。彼女は新開くんと話すときに、どこか後ろめたさを感じるような素振りを見せる。なまえは新開くんの彼女なのに、なぜ彼氏に遠慮するのだろう。仲睦まじい二人の姿を見て、ひっそり溜め息を吐いた。二人が別れるなんて、ありえないのに。けれど心のどこかで、別れた新開くんと付き合えたらいいなーと思う。それはあくまで私の願望であり、現実には有り得ないこと。
わたしは今日も、おこぼれが貰えないかと期待していた。
新開くんが何処かに行ってから、彼女は携帯を取り出し誰かと連絡を取り始めた。わたしも話の相槌を打つフリをする。そのとき何気なく画面が見えてしまった。そこには「山岳」という名前があった。
山岳?山岳って、真波山岳?えっ、どうして付き合っている新開くんは名字呼びなのに、真波くんは名前で呼ぶの?もしかして、噂は噂であって本当は二人は…
私の疑問は、やがて確信に変わる。たまたま、真波くんと新開くんが話しているのを盗み聞きしてしまった。確かに今、真波くんは「付き合っている」と言った。そして新開くんも、「デキテイル」と。
そのデキテイルが、容姿端麗な新開くんからは想像できないような下品な意味なんだと、分かった。そして同時に、彼女に対しても嫌悪に近いものを抱いた。真波くんと付き合っているのに、新開くんのモノをくわえたり、挿入させたりしてるんだ。新開くんの性欲処理なら、私が代わりにやってあげたい。アウトオブ眼中のワタシが、新開くんとセックス出来る可能性なんて、0.034%くらいしかないことは分かりきっているけれど。
それでもおこぼれ欲しさに、今日も彼女の友達を演じる。
そんなある日、なまえに呼ばれた。「今から話せる?」と。まるでさっきまで泣いていたかのような声だったから、咄嗟に「うん」と答えた。
部屋に行けば、微かに新開くんの匂いがしたような気がした。彼女は目を真っ赤にして、まだぐずぐずと泣いていた。
「聞いてほしいの、」
彼女の話は壮絶なものだった。高校生で、こんな修羅場を迎えたのはおそらくなまえくらいではないだろうか。真波くんにバレた、その原因が新開くん?新開くんが、真波くんになまえとの関係を言ったかもしれない?新開くんは、そんな人じゃない!
真波くんと付き合っていて、でも新開くんとセックスしていたあなたが悪い。望んでも抱いてもらえない私と、望んでないのに抱いてもらえるなまえ。セコイセコイセコイ。ズルイズルイズルイ。どうして、と頭の中はそればかり。私は、新開くんが好きなのに。
「思ったけどさ、なまえはどうしたいの?」
私の言葉に彼女はハッとした。だって、他人の私からしたらあなたは欲張りすぎる。真波くんと新開くんをたぶらかしているようにしか見えないもの。新開くんや真波くんからしたらアウトオブ眼中の、ただの傍観者にすぎない私の意見だけど。その時なまえが口を開いた。
「私は、」
あれから数日。彼女と新開くんの噂はパッタリ止んだ。止んだ、というよりも別の噂が飛び交った。
【真波となまえは付き合っている】
新開くんは、この噂を未だ知らない。
140909
まさかの真波オチ。