来た、あいつが来た。

以前一度見かけてから、彼は頻繁にこの店に来るようになった。主に返却なのだが、それがどうも可笑しい。何故かゆっきーがレンタルして行った海外ドラマの返却に来るのだ。顧問(仮)が生徒の、…えーっと言っていいのかな?まあいいや、うん。生徒のパシリというのはあまりよろしくない気がする。

「……、借りたいのだが」
「!あっいらっしゃいませ」

どうやらボーッとしていたようで、目の前にはあの顧問(仮)が立っていた。こ、怖い…。いつも思うけど迫力あるよね、彼。常連の手塚さんくらい迫力がある。というか手塚さんに至っては会社員でも通じると思う。ご鞭撻という言葉を、今時の中高生は知らないし絶対使わない。顧問(仮)に手渡されたカードの名前には、幸村精市と書かれていた。

「……あの、本人様じゃないとこのカードは使えないんですけど」
「む、そうなのか?」
「はい。」
「しかし幸村は病弱なのだぞ。」
「(病弱…?)えっと…お客様カードはお持ちですか?」
「む、幸村に頼まれただけでカードとやらは持っていない」
「新しくカードを作る場合、お客様の身分証明書が必要ですので……免許証か何かお持ちですか?」
「……」

免許証、と言えば顧問(仮)は急に黙ってしまった。えっ、免許証は不味かった?もしかして免停くらったの?スピード違反?わき見運転?

「…学生証でいいか?」
「はい学生証で大じょ……はい?えっ…学生証?あっ大学生ですか?」
「中学生だ」

思わず持っていたゆっきーのカードを落としてしまった。中学生?え、中学生?中学生ってあの中学生だよね?ゆっきーやワカメ、トルネにマングースと同じ中学生で合ってるよね?あとは白石くんや光くん、キノコと同じ中学生だよね?徳川くんや入江っちより年下の中学生でいいんだよね?私の知ってる中学生ってその中学生だよね?

「…幸村や手塚とは同学年だが」
「えっ、と?はいはいはい、あー……中学生、ですよね。大丈夫ですはい、解決しました。」

顧問(仮)が中学生だなんて、一体誰が予想しただろう。スラスラと申込書に書く彼の字は何というか…達筆で…中学生には見えないです、はい。しかし学生証というきちんとした身分証明書があるから彼はれっきとした「中学生」である。わたしの知ってるあの中学生だ。

「ありがとうございましたー…」

入会手続きを終えた今も、わたしは信じられない気持ちでいっぱいだった。だって革財布だよ?中学生が革財布持ち歩きます?しかも名刺も入ってた…。自称Kingもそうだけど、最近の中学生って名刺持ち歩くのが普通なのかな?大学生で持ってない私が可笑しいのかな?しかし…顧問(仮)改め真田さんは本当に中学生で合っているのだろうか?可憐なゆっきーと同い年にしていいのでしょうか?…今度ゆっきーに真田さんとどういう仲か(主に同年代で合っているか)聞いてみよう、あと病弱の意味もね。


130304
タイトルは「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」をパロってみました。
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