最近、際立って中高生くらいのお客さん、というかテニス部の常連が増えている気がする。気のせいですかね、と隣にいる先輩に聞けば「研修生ちゃんが入ってからだよね」と言われてしまった。

「でもさ、みんな見事にイケメンだよね!私ここで働いてて良かった〜」
「え、そうですか?」
「ほら、あの眼鏡の彼とか。」

先輩が指差す方を見れば、赤いおかっぱと眼鏡の人がいた。二人とも制服で、あれは多分、氷帝学園とかいう一般人や庶民は通えない金持ち学校だ。金持ちなら借りずに買えよ、とか思うがまぁ…彼らは学生だし、仕方ないか。

「くそくそ!何でホラーなんか借りるんだよ!」
「しゃーないやろ、日吉が見たい言い出してんから。…てか岳人、DVDは中身だけでええねんで。」

パッケージ戻しや、と諭す彼に赤いおかっぱは「はぁ!?」とあからさまに不満そうだった。

「これがあったの、一番上だっつーの!侑士が置いてくれよ!背伸びしたら届くだろ!」
「何で俺やねん、嫌やわ。」

跳んだら置けるやろ、と文末に「(笑)」が付きそうな眼鏡の話し方に、赤いおかっぱは気にしてないのか、「あっ、そっか!やっぱ侑士天才だな!」と眼鏡を絶賛していた。いや、あんた眼鏡に馬鹿にされてるよ。

「天才とか知ってるわ。ほら岳人、跳んでみそ」

くそくそ!こういうのはタイミングなんだよ!と叫ぶ赤いおかっぱだが、やはり馬鹿にされているのには気付いてないらしい。このやり取りを見ていれば、意外と眼鏡の方は性格が悪そうだ。二人をチラチラと見ていれば、眼鏡が私の視線に気付いたのか、レジの方にどんどん近付いて来た。ヤバイ、「なに見てんねん」みたいな、いちゃもん付けられたらどうしよう。

「…、いらっしゃいませ」
「今日が初めてやし、カード作りたいねんけど。ああ、身分証はあるで」

眼鏡は意外と普通だった、視線に気付いてなかったのだろうか?他店で作ったこともないらしいので、申込書に記入してもらえば、更に新事実が発覚した。あのネタバラし新作男と名字が一緒ではないか。思わず「うわぁ…」と声を出せば、眼鏡の彼は「ん?何か間違えた?」と私に尋ねてきた。

「あ、いや、違います。その、…知り合い、というか天敵というか…、その人と名字が一緒だったので。あっ、珍しくないですか?忍足って」
「はは、まさか……謙也ちゃうよな?」

えっ?思わず彼を見れば「うわ、当たってしもた」と眉間に皺を寄せて顔をしかめていた。あからさまに嫌そうな表情だった。

「えっとネタバラ…忍足くんと、兄弟なんですか?」
「(…ネタバラ?)あー、ちゃうちゃう。謙也な、俺の従兄弟やねん」

へえ、と感嘆のため息を漏らせば眼鏡の方の忍足くんは「あいつと会ったら最悪や」と嘆いていた。仲が悪いのか、と聞けば普段は仲良しらしい。ただ今は喧嘩中で、会いたくないのだそうだ。

「聞いてや、俺楽しみにしとった映画の内容電話で全部言われてん。あいつ、有り得へんやろ?」
「はぁ、」
「しかもハリポタやでハリポタ。ほんま有り得へんっちゅーねん」

ハリポタ、その四文字で私の中で眼鏡の方の忍足くんに対するイメージが変わった。彼と私はあいつにネタバラしをされた同志、というか仲間だ。少なくとも、新作ネタバラし男よりかは仲良くなれそうな気がする。

「くそくそ侑士!探したじゃねーかよ!」

新作ネタバラし男の話題で盛り上がる中、赤いおかっぱがレジまで走って来た。

「ああ、岳人のこと忘れとったわ」
「はぁ!?」

で、DVD見付けたんかいな?と悪怯れる様子もなく平然と聞く、眼鏡の忍足くんに、おかっぱは「あいつが見たかったのって、これだろ」と数本のDVDを差し出した。

「……なんや、これ」
「何だよ、侑士。呪いのビデオ知らねーのかよ。」

赤いおかっぱが持っていたDVDはほとんどホラー映画だった。定番のリングや着信あり、更にはマイナーなものまであった。

「こんな借りるんか?」
「だってよ、あいつが見たいのどれか分かんなかったから、適当に選んできた」

眼鏡の忍足くんは「ふーん」と、さして興味もないのか直ぐにDVDから視線を反らした。

「あぁ、岳人がDVD探してる間に、カード作っといたし。」

ほなこれ借りるわ、と差し出されたDVDは全部で六本だったが、初回は五本までである。どれか一本減らして頂けますか、と言えば「え、」と困惑する赤いおかっぱと真逆に、忍足くんは「告白は無しで」と、即決していた。

「くそくそ侑士!それ俺が見たかったやつじゃねーか!日吉のホラーから減らそうぜ!」
「待ちぃや岳人。告白なんて人気やから、そのうち金曜ロードショーでやるわ。」
「そのうち、っていつだよ!」

そのうちや、と曖昧に濁したまま忍足くんと赤いおかっぱは帰って行った。去り際、忍足くんからネタバラし新作男の対策として、素晴らしい魔法の言葉を教えてもらった。この一言でネタバラし新作男は頭を抱え込むほど苦しむらしい。是非とも次回彼が来た時に言ってみようと思う。
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -