今まで十数年生きてきて、初めて紳士と呼ぶにふさわしい男性と出会った。とても素敵な彼は「柳生くん」と言う。ちなみにゆっきーと同じ部活のあの眼鏡くんである。何故こんなにも紳士なのか、と以前尋ねれば普段から人を騙す人と一緒にいるのです。と訳の分からない返答をされた。彼は紳士だが、どうやら頭のネジが三本くらい取れかけているらしい。私も同じことをしているのですけどね、と苦笑いで付け加えられた。訂正しよう、彼の頭は全てネジが外れているようだ。

「最近も多いみたいですね、振り込め詐欺」
「あ…そうですね」

そして彼は非常に返事に困る話題を振ってくる。今日はいい天気ですね、と言われるならまだしも、中学生のくせに犯罪について尋ねるなんて頭がおかしいにも程がある。一体こいつは何歳なのだ。それに振り込め詐欺が減ろうが増えようが、彼が困ることなんかないのに。わたしの返答が気に入らなかったのか、彼は眉をひそめてまるで「それだけですか?」と言わんばかりの顔をした。悪かったですね、反応が鈍くて!

「…ところで、そろそろ気付いてはくれませんか?」
「えっと、なにがですか?」

気付いていないようでしたらいいです。と意味ありげな微笑みを残して彼は去っていったが、何に気付けばいいのだ。え、あれですか?もしかして髪型変えたとか?前髪切ったのになんで気付いてくれないのよバカ〜みたいな感じですか?もしかしてメガネの度数が変わった?それとも前髪の分け目を変えた?五分くらい悩んだがさっぱり分からん。逆に真剣に五分も考えた私がバカみたいだ。はぁ…とため息を吐けば「大丈夫ですか?」と先ほどの彼がまたやってきた。

「ま、まさかさっきの答えを聞きにまた来たんですか!?」
「??いえ、私は今初めて来ましたが」

ドッペルゲンガー?それとも彼が多重人格?え、ええええこれは…心霊現象?思いっきり訳が分からんといった顔をすれば、彼は冷静に「ああ、仁王くんですね。全くもう」と肩をすくめた。え?仁王??って、あの銀髪の?

「私仁王くんとペアなのでよく変装するのですよ。お互い…ね?」

にっこりと先ほどの偽柳生と全く同じ笑顔で去って行く彼にドキリとした。きっと彼は本当は紳士なんかではないのだと、私は悟った。
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