格好良い柳を目指したつもり
※ヒロインめちゃくちゃ性悪で柳の口調が迷子。



「だからな、このDVD見れへんかってん。何で見れへんかったDVDに延長料金払わなあかんねん」

出た。「このDVD見れなかったから延長料金付いても俺は払わないぜ」という、こういった非常識な輩が稀にいるのだ、本当に極稀に。延長したのお前だろ?大体、こっちは100円で貸してやってるんだぞ、延長料金の240円くらい払ってほしいものだ。踏み倒しが世間で通用すると思っているのだろうか、と内心イライラしながらも満面の笑みで話す私はある意味神かもしれない。ヤバイ私、接客のプロフェッショナルゥ〜!!

「お客様、延長料金が付いたのと、DVDが見れなかったのは別ですので。」
「はあ?」
「……、お客様が期限内に返却して頂けなかった分はお支払して頂きますが、見れなかったDVDは同じ物と交換させて頂きます。」

そんなん言われても俺は払わんからな、と頑なに払わないこの客に段々私もイライラしてきた。何だよお前何様だよ…あっ、お客様()か。お客様は神様です、とか言い出したの誰だよ…。こっち(店側)にも客を選ぶ権利くらいあるだろ…。こいつ毎回ディスク傷多いんだよ、帰って来たDVDやっぱ傷だらけじゃん、これ研磨二回は回さないと取れない傷じゃん…。傷付けた上に、延長料金支払い拒否とか本当に勘弁してくれよ…もう「傷だらけな上延長金支払い拒否一回目」って書いておこうかな、と半ば諦めかけた時、救世主は現れた。

「期限内に返さなかったお前に落ち度があるのではないか?」

バッと顔を上げれば、いつぞやのぱっつんが男の横に立っていた。「な、何だよお前」と動揺する男を尻目に、ぱっつんは優雅に言葉を続けた。

「そのDVDはあくまで借りているものだろう。一週間という期限を延長したのは店ではなくあくまでお前だ。期限内に返さなかったら延長料金が付く、と入会の時に説明を受けたはずだろう。どうせ携帯を弄りながら適当に聞いていたか、友人と話していて説明を聞き流していたかのどちらかである確率九十%。説明を聞き逃しての支払い拒否なんて非常識な行為だな。いい大人が240円を、混雑したレジ前で渋るなんて恥ずかしいとは思わないのか?お前の後ろに何人いると思っているのだ、支払いを渋れば、店員だけでなく他の客にも迷惑がかかるのだぞ。見れなかったの分は同じ物と交換すると店側が言っているのだから、延長料金を支払って同じDVDを再度無料で交換してもらうのが筋ではないのか。他店だったら交換さえしてもらえないなだぞ?その醜態を大勢の前で晒してまで、お前は240円支払うのを渋るつもりか?」

カッと目を見開くぱっつんに男は、半べそをかきながら延長料金を支払い帰っていった。恐るべしぱっつん。しかしぱっつんは正論を述べたのだから、私としては延長金も貰えたし、レジ混雑の解消になったのでスゴくありがたい。

「あ、あの」
「有り難うございます。お陰で助かりました、とお前は言う…が、礼はいらん。あくまで俺が勝手にしたことだ。」

フッと笑ってから、ぱっつんは去って言った。何あれ、ぱっつん男前すぎんだろ…!スゴくかっこいいよぱっつん!!ヤバいヤバい!てかぱっつんヤバいよ!!!

「…今のヤバい、かも」

この日を境に、私はぱっつんの大ファンになった。
「#寸止め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -