「貴方が甲斐くんの彼女ですか」
私をまじまじと見つめてから、トルネはさらりと爆弾発言をした。え?彼女?誰が?誰の?
「あのー、カイって人知り合いにはいないし、誰かの彼女になった覚えもないんですけど」
「可笑しいですね。甲斐くんは、研修生さんと付き合った、と言ってたんですがね」
初耳です、と率直な感想を彼に伝えれば、携帯を取り出し「甲斐くん」の写真を見せてくれた。
「、こいつ…!」
そこに映っていたのは、あの訳の分からない沖縄方言を喋る、馴れ馴れしい茶髪の方だった。薄々予想は付いていたが、あの茶髪の名前なんて知らないし。むしろ興味ないし。…しかし改めて見たら茶髪は意外とイケメンである。黙ってればいいのに、っていう典型的なあのパターンだ。
「もう一度聞きますが、甲斐くんとは付き合って無いんですね」
「付き合って無いですね、彼にちゃんと訂正しといて下さい。」
全く、とため息を吐くトルネを見て、普段からあの茶髪が何かやらかしているのは安易に想像が出来た。どうせ金髪も普段から浮いているに違いない。いやきっとそうだ。困っている女子を放っておくなんて、どうかしてるぜ!
「平古場くんは普段からそんな感じですよ。あまり他人と戯れたりしないですね」
「へえ」
聞いてないのにトルネは色々と金髪について教えてくれた。何かハブ?マングース?多分マングースだった気がする。と言う大技を持っているらしい。なんの技だっけ、…ああバスケか。マングースはぐねぐねと軌道が曲がるらしい。簡単に言えば、ボールが一人で青峰のドリブルをするようなものだ。あと昔は黒髪だったんだって。本土に対抗する為なんだって。思わず理由が厨二病すぎて笑いかけたが、何とか堪えた。ふーん、あの金髪平古場って言うんだ。
「彼らと知り合いなのに、貴方は標準語なんですね」
「うちなーぐちも話せますよ」
「へえ」
「例えば…ヤー、チュラカーギーやっしー。…とかですね」
「?えっと、何て言ったんですか?」
何て言ったんでしょうね、と笑ってはぐらかすトルネは結局意味を教えてくれなかった。はぐらかされると逆に気になるものだ。もしかして悪口だろうか?いやトルネはあいつらとは違って、いい人だと信じているからそんなはずない。悶々としていれば、不意にトルネが話し掛けて来た。
「今度平古場くんに会ったら、ヒーラーと呼んでみてください」
「それ、彼のニックネームですか?」
「…まぁそんな感じです。ところで、どうぶつの森はありますか」
「…品切れ中ですね」
そうですか、と少し残念そうにトルネは帰って行った。うーん、トルネも住人になりたかったのだろうか?今度金髪が来た時、試しにヒーラーと呼んでみよう。
※ヒーラー(ゴキブリ)
チュラカーギー(可愛い)