「英語の映画って、どれっスか?」

目の前に立つワカメの第一声に、思わず硬直した。は?何それ。洋画じゃなくて英語の映画?それって、と言い掛ければ横からぱっつんが口を挟んで来た。

「それって洋画のことじゃないですか、とお前は言う」
「……えっと」
「柳先輩なに言ってんスか!俺が探しているのは英語の映画っスよ!」
「気にしないでくれ、赤也は普段からこんな感じだ。」

はぁ、と適当に相槌を打てば、ぱっつんは「オススメの洋画を教えてくれないか?」と聞いてきた。

「どういう話がいいんですか?」
「出来れば赤也でも分かる話にしてくれ」

それって…かなり難しい気がする。第一洋画を知らない時点で、ワカメにストーリーが理解出来るのだろうか。

「ゴースト-幻のニューヨーク-とかオススメですけど、」

確かにあれは名作だな、と頷くおかっぱに、見たことあるんですか?と聞けば「小学校三年生の時に見た」と言われた。小三であの感動が分かるなんて、おかっぱは意外とスゴい人なのかもしれない。

「ショーシャンクとか人気ですけど、」

彼には無理でしょうね…という意味を込めてちらり、とワカメを見れば「英語の映画なら何でもいいっス!」と満面の笑みで返された。だから英語の映画じゃなくて、洋画だってば。

「赤也、無難にタイタニックにしないか?」

ぱっつんの提案に、ワカメはあからさまに「えー」と不満そうだった。

「それ先週金曜ロードショーでやってたじゃないっスか!」
「だがお前は見ていないだろう、その時間ゲームをしていた確率九十%」

ぱっつんの予想が当たっていたのか、ワカメは「俺、サマーウォーズが見たいっス!」と、無理矢理話題を変えた。

「赤也、それはアニメだろう」
「でも仁王先輩と丸井先輩のお薦めらしいんスよ!」

え、仁王と丸井…?その二人が、あの銀髪と赤髪なら世間は狭い、狭過ぎる。もしかしたらここに来る中学生軍団は、みんな知り合いなのかもしれない。ってことは、ワカメとぱっつんもグルなのか?

「柳先輩!サマーウォーズ借りましょうよ!」
「赤也、課題を忘れたのか?」

「課題?」と思わず口を挟めば、ぱっつんが丁寧に「洋画一本見て、聞き取れた単語を書き写す課題を赤也が出されてな」と教えてくれた。

「大丈夫っス!辞書見て写すんで!」
「……赤也」

結局、ぱっつんとワカメはサマーウォーズだけを借りて帰って行った。「精市にバレたら怒られるぞ」とぱっつんは言っていたが、ワカメはあまり気にしていない様子で「大丈夫っスよ!幸村部長には、ちゃんとやったって言うんで!」と言っていた。ゆっきーと彼らが知り合いか試す為に、次にゆっきーが来た時、ワカメのことをバラしてやろう、と密かに決意した日だった。
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