今週もホモ疑惑がある、テニス部の先輩と後輩のあいつらが二人仲良くやって来た。

「宍戸さん!やっぱりアメトークがいいです!」
「長太郎、アメトークは先週借りただろ。今週は逃走中って決めてたじゃねーか」
「アメトークの21のメが返って来てるんですよ!先週は21のアだったじゃないですか!」

どっちも一緒だろーが、とロン毛は呟いていたが違う、奴は「ア」と「メ」の違いを分かっていない。一見同じように見える人もいるかもしれないが、勿論中身は別物である。バイト視点で詳しく言えば、お客さんの借り間違いや、返却の際中身違いが多い、という厄介な「ア」と「メ」だ。

「宍戸さん!これだけは譲れません!一緒ではないです!アとメは別物です!」

後輩よ、よく言った。そうだ、別物だ。彼はよく分かっている。流石アメトークのファンだけはあるな。と非常に上から目線な評価を付けた直後、ロン毛は「もー何でもいいからよ、取り敢えず21のメと逃走中借りようぜ」と少し投げ遣りだった。あのロン毛はダメだな、絶対返却の時中身違いで返すタイプの人間だよ。直すこっちの身にもなれよな、と内心毒づいていれば、後輩の子が新作の棚を見て嬉しそうにロン毛を呼んでいた。

「宍戸さん!"僕等がいた"の前後編がありますよ!」
「長太郎、今日は逃走中とアメトークにするんじゃねーのかよ」

ロン毛に咎められた後輩は、犬みたいにシュンとした後「ですよね…」と棚を見てうなだれていた。「一緒に借りてあげなよ!彼スゴく見たそうじゃん!」と思わず言いたくなったが、所詮店員に過ぎない私は、言えるわけもなくロン毛が出したアメトークと逃走中の二本の会計をした。ちなみにロン毛は会員だが後輩は会員ではない。その為「ちょーたろー」という名前しか分からないので、本当に後輩かは際どいところだ。話し方や素振りでロン毛を慕っているのは分かるが、ロン毛より背が高いので同い年かもしれない。今日もジッと後輩の男を見たが、結局年齢までは分からなかった。

「ありがとうございましたー」

彼らが出る直前、後輩が「あの店員さん、宍戸さんのことずっと見てませんでした?」と言ったが、それは違う。私が見ていたのはむしろ君の方だ。

「放っておけよ、長太郎」

はにかみながらロン毛は言うが、だから私はロン毛ではなく、クロスネックレスの男の方を見ていたのだ。ロン毛に話しながらも、未だに恋しそうに新作の棚の方を振り向く後輩に、ロン毛が彼の肩を突きながら呆れたように微笑んだ。

「ったく、来週来た時に借りればいいだろ」
「っ、はい!…来週も、宍戸さんとDVD鑑賞が出来るなんて光栄です!」
「お前……そっちかよ、」

そう言いながらも、何処か嬉しそうなロン毛は、なんだかんだ後輩思いな奴なのだ。でもやっぱり、私の中でホモ疑惑はますます濃くなる一方だった。
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