※似非ウチナーグチ

「DVD探してるやっしー、うんちけーしてほしいんさー」
「う、うんちけー?」
「アンクトゥ高校デビュー、マーヨ?」
「……はい?」

一体彼らは何を言いたいのだろうか。むしろ彼らの話す言葉が、日本語かさえも分からない。その答えは簡単だった。彼らの話す言葉がウチナーグチ、つまり沖縄の方言だからだ。

「やー、聞こえてるやっしー?」
「えっと、」
「高校デビューが借りたいんさー」

ああ、高校デビューですね。と邦画の方まで案内した時、金髪のヤンキーが「わんはモテキが見たいさー」と言い出した。

「凛!チューは高校デビューにするって決めたやっさー!」
「気が変わったやっしー」

モテキまーよ?と金髪は私に聞くが、モテキは決してマヨネーズではない。モテキは映画です、と告げれば二人は顔を見合わせていた。

「ぬぅよ?」

まじまじと私の顔を見る金髪に「えっと、だから、さっきマヨネーズって…」とぼそぼそと呟けば、金髪だけでなく茶髪までもが笑いだした。

「こいつ、まーよをマヨネーズって勘違いしてたっさー!」
「まーよ、は何処っちゅー意味やっしー!」

大爆笑する二人だが、ここは沖縄ではなく本土である。彼らが日常会話で使う、ウチナーグチがこっちで通じるわけもないのだ。まるで分からなかった私を、馬鹿にするように二人は笑うが、こっちからすれば「え、なに君たち宇宙人?」と聞きたいくらいだ。

「やー、うちんけーも知らんさー?」
「う、」
「うちんけーは案内っちゅー意味やっしー!わんがウチナーグチ教えちゃろーか?」
「結構です!」

茶髪は馴れ馴れしく私の手を掴んで話し掛けるが、こっちとしてはいい迷惑だ。その間にも金髪は、既にモテキを取ってからロンハーを選別している。茶髪に「ほらお前も金髪のとこ行けよ」という熱い視線を送ったが、「やー、そんな見つめられたら照れるさー」と顔を赤らめながら言われた。

「裕次郎ー、ロンハーの3Lと5Lどっちにするさー?」
「両方!」
「あいー」

私が茶髪に拘束という名の営業妨害を受けているのにも関わらず、金髪は見向きもしなかった。あの金髪は困っている人を平気で見捨てるタイプか。「金髪ヤンキーめ!一匹狼気取ってんじゃねーよ!」と心の中で毒づいている間にも、茶髪はうちなーぐちを色々と私に(勝手に一方的に)教えてきた。

「かなさんどー、は好きって意味さー!」
「はあ」
「やー、言ってみんよ?」
「……かなさんどー」
「わんもかなさんどーやっしー!」

そうですか、と笑って(勿論愛想笑い)レジまで戻った時、茶髪は大声で「凛、わん彼女出来たさー!」と言っていたが、それは私のことでは無いと信じたい。
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