最近、近所のレンタルDVD屋さんで働くことにした。働き始めて一ヶ月、だいぶ仕事にも慣れてきた。そして気付いたこともある。
変な常連がやけに多い、ということに。

「めっちゃ絶頂やわ」

DVDのパッケージを見ながらエクスタシーとか叫ぶこの人は、変な常連の一人、包帯の人(命名は勿論私)だ。ちなみに名前は白石蔵ノ介くんという(カードの名前を見た)、彼はほぼ毎週月曜日に来る常連だ。大体いつも、洋画のDVDを借りて行く。

「暇だからDVDの返却、行ってもらえる?」
「あ、はい。」

先輩に返却されるように頼まれたので、無難に洋画のDVDを返却することにした。返却の時に横から視線を感じたのでチラリと盗み見すれば、ばっちりとあの包帯の人と目が合った。

「こんにちは」
「……」

ドアップで見た彼は、かなり美形だった。思わず見入ってしまえば「ん、大丈夫かいな?」と更に近付いて来たので慌てて「だ、大丈夫です!」と答えた。

「俺、白石蔵ノ介っちゅーねん。」

実は、前から知ってます。なんて言えばストーカーみたいだから、黙っておいた。しかしこれは…、世間一般で言うナンパだろうか。顔をしかめていれば「名前は?」と聞かれたので、取り敢えず適当にキャサリンと名乗った。

「キャサ…、キャサリン?」

え?外国人なん?と慌てる様子が面白かったので、このままキャサリンで通すことにした。

「キャサリンって呼んでください」
「いや、絶対日本人やろ!外国人なわけないわ!」

だって金髪ちゃうし!目も蒼くないし!と必死な彼を見れば、何とも言えない気持ちになったので、正直に名乗ることにした。

「……研修生です」
「研修生ちゃんやな、よろしゅう」

ニコッと微笑む包帯の人は右手を差し出して来たが、生憎私の右手には大量のDVDがあるため握手は出来なかった。

「えっと…、返却に行っても良いですか?」

ようやく彼は私の右手にあるDVDの存在に気付いたのか、「仕事の邪魔して堪忍!」と手を合わせて謝って来た。

「いや大丈夫です、では」
「ちょ、待って!俺も手伝うわ」

はぁ?お客である彼に手伝わせるなんて、勿論論外だ。それに一見簡単そうに思われる返却にも、色々と決まりがある。「いや結構です」と断れば「手伝いたいねん!」と頭を下げられた。そうか、この包帯男は私の仕事を奪う気か。

「返却は、私の仕事です」
「おん、知ってる」

じゃあ…と言い掛ければ、彼は恥ずかしそうに「いや、あんな、研修生ちゃんが返却行ってたら…その…、レジして貰えへんやろ?」と何故か赤面しながら言い出した。ああ、そっか。レジに人がいないことを懸念して言ったのか。ようやく彼の言いたいことが分かったので納得した顔で「大丈夫です」と告げた。

「ちゃんとレジには、他のスタッフがいますよ」

彼を見れば唖然とした顔で「自分、鈍感やなあ…」と呟いていた。彼の言いたい事はこれじゃなかったのか。その後彼は、私の返却が終わるまで待っていたが、何故待っていたのかは、左手に包帯を巻いているくらい未だに謎である。
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