Dustbox | ナノ

黄瀬と辛党彼女

2012/10/12 09:27


黄瀬×赤司双子妹(そんなネクタイの話)の第二弾を書こうとしたのだけれど途中で詰んだのでお蔵入り。
激辛ペヤ○グというものが存在していて、それがめちゃめちゃ美味しいよっていうことを伝えたかっただけです。
それと幸せそうにご飯食べる女の子って可愛いと思います好きです。





俺はたまに、この子の頭をかち割ってやりたいと思うことがある。
いやそれは別に殺害願望とかそんな物騒なものでなくて、かち割って彼女の考えに触れてみたいと願うからである。

黄瀬には彼女の考えが読めない。
全ての物事においてではない。欠片も彼女の思考を理解できなければそもそも付き合ってなどいないけれど、黄瀬と彼女では考え方に天と地ほどの差があるので、彼女の行動が理解不能な時は多々ある。彼女に言わせれば、その逆もまた然りらしいけれど。


彼女と付き合って一体幾日が経っただろうか。今日もまた、彼女の奇行に黄瀬は遭遇していた。






「名前っち…凄いにおいっスねそれ」

休日だからか人が疎らにしかいない食堂の片隅で黄瀬は苦笑を浮かべながら言った。
それに対して、彼女もとい赤司#名前#はしれっと「においは強烈かもしれないけど味は一流」などという若干意味の分からない名言を残して、コンビニ袋から徐に箸を取り出して割った。


徐々に本格化する冬。海常高校は設備がしっかりしており暖房もまた完備なので校内にいて寒さを感じることはないが、ふとした瞬間に窓の外にうっすらと広がる霜を見て、そういえば真冬だったなと思い出す。けれど今黄瀬たちがいる食堂は、休日のためか人が疎らにいるばかりなので、広さに対して人が少ないためか少しばかり寒さを感じた。それでも取るに足らない程度ではあるが、黄瀬はセーターの袖を手の甲が隠れるまで引っ張った。

「涼ちゃんも食べる?」

頬杖をついて彼女を見詰めていると、ふと思い出したように彼女が訊いてきた。その手には箸。そして彼女の目の前には先刻から強烈なにおいを放っていたインスタント焼きそばがある。彼女の申し出は嬉しいとは思うが、黄瀬はその焼きそばのあまりの赤さに表情を歪ませて要らないと答えた。


彼女が食べているのは激辛と大々的に宣伝された焼きそばだった。昔からある人気のインスタント焼きそばに辛い要素が投入されたもので、一部のコアな辛党に人気らしい。そして目の前の彼女は、そのコアな辛党に匹敵していた。
練習が午前中で終わった黄瀬のもとに嬉々として赴き、そしてその腕を取って近くのスーパーまで彼女は連行した。たまたま黄瀬も昼食を持ってきていなかったので丁度良いかと彼女の買い物に付き合ったのだが、この世に激辛焼きそばなどというものが存在することを初めて知った。別段辛いものが苦手なわけではないが強いて食べたいとは思わない黄瀬にとって彼女が買ったものは興味の対象ではあるが、食べるかと問われて素直に食べたいと思えるほど美味しそうなにおいは放っていなかった。

「涼ちゃんも食べてみたらいいのになー。嵌るのに」

明らかに辛そうな匂いを放っている焼きそばを美味しそうに、それはもう幸せそうに頬張っている彼女の姿は、実に微笑ましいものであった。そしてその横で黄瀬は今しがた食べ終えた空のコンビニ弁当を袋に詰めた。


名前っちは本当に、美味しそうにご飯を食べるな、と思う。
今まで数え切れないほど一緒に食事をしたけれど、いつも彼女は幸せそうに眉を垂らして頬張っていた。別にご飯は逃げないんスよ?と暗にもっと落ち着いて食べてと言ったこともあったけれど、彼女の放つオーラが幸せ以外のなにものでもないことと、そんな彼女がとても可愛かったので、もう何も言うまいと黄瀬は決心した。






完結してない\(^o^)/
これシリーズ化してみたいなと思う気持ちが3割ほどある。






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