Dustbox | ナノ

お蔵入りした黒子連載の冒頭

2012/08/24 22:14


プロットもなにも思い描かずに、完全に一時のテンションに身を任せた結果。
晴れてまだおになりました。このネタ通じるかな…!




***


「あっつー………」

ジリジリと照りつける太陽光を顔面に受けながらアイスをかじった。シャリ、と音のするそれはついさっき買ったばかりなのに既に溶け始めていて、溶けた液が棒を伝って太ももで弾けた。

「うわ、ベタベタするじゃん……もう」

反射的に指先で拭ってみたが液が広がるだけで何の解決策にもなりはしない。むしろベタつく箇所が増えただけで不快感を増幅させただけだった。
汚れていない方の手でがさがさと鞄を漁るが、こういう時に限ってティッシュが無い。ハンカチも無い。否、こういう時に限ってではなく常にティッシュもハンカチも持っていないことをこの時点ではっと思い出した。

眉根を寄せてベタつく指を見つめる。アホか私は、と内心毒づいたところで自分の女子力が上がるわけでもなく。日頃の行いが悪いからかと自分なりに納得して残っていたアイスを一気に口に頬張った。


拭くものが無いなら仕方がない。即効で家に帰って家のタオルで拭くだけだ。そう決めたところで、ゴミをコンビニの袋に入れて雑に丸く潰してから近くに設置してあったゴミ箱へと投げた。もう少しというところで軌道がずれてゴミ箱から弾かれたが、今は落ちたゴミ箱を拾って入れ直す単純な作業すら億劫だ。どうせ誰も見ていないだろう、と。自分の面倒臭い性分が祟ってゴミを放置することに決めた。

ローファーのつま先を地面に数回、叩いて足の位置を整える。まぁ脱げない程度にコントロールすれば問題ない。本気で走ればものの10分だかローファーだから15分程度か、と予測をつけて大きく息を吸った。
肩掛け鞄をリュックのように背負ったところで駆けっこ開始だ。勢い良く地面を蹴った。――が、何故だ。身体が前に進まない。



「は?」

思わず声がでた。
後ろに降った腕が前に引けないのだ。なにか強い力で押さえつけられているような、そんな感覚に弾かれたように後ろを振り向いた。

そこには、そこには静かに佇む水色の瞳があって、風で揺れる前髪の隙間から鋭い眼差しでこちらを見ていた。

「ごみ、ちゃんと捨ててください」 

そう言って彼は目線で促した。目線の先には先刻自分がゴミ箱にしっかり入れられなかったコンビニの袋があって、なんとも醜い風貌で風に当たって揺れていた。
はぁ、とひとつ吐息を吐いてから水色の彼に視線を戻してみる。
微動だにせず佇む姿はどこか威圧的で、思わず彼の水色を視界に入れないように視線を逸らした。

「ちゃんと拾うから、離して」

予想外に低い声が出た。視線を外したままだが、彼が小さく頷いてから掴んでいた腕を離したのは気配で分かった。

体温が消えて直ぐに、彼に見向きもせずにゴミ箱へと直行した。真中の日差しと温い風に晒されて異様な熱さを持ったコンビニの袋は持つだけでも気持ち悪くて、さっかくアイスで身体が冷えたというのに一瞬で身体を温めた。どこまでも不快なコンビニ袋である。

かさりと小さな音がしてゴミ箱に落ちていった袋。それを聞き届けて、これでどうだと言わんばかりのしたり顔で振り向いたら水色の彼は再び頷いた。

「もうダメですからね、今後こういうの」

落ち着いた声音だったが釘を刺すのは忘れないようだ。それが水色の彼の性分なのか。

暫く見つめ合ったのち、彼は不意に視線を外して、足元に置いてあったスクール鞄らしきものを持ち上げて肩にかけた。「では」と余りにもあっさり言うものだからこちらとしては何が何だかうまく理解しきれていない。

去りゆく背中をとりあえず引き留めようと口を開くも、その前に目標の背中が止まったから驚きである。
なにやら鞄に手を突っ込みながら静かに振り返った。こちらに向かって何かを差し出した。

なにを差し出されているのか分からず首を傾げれば、水色の彼は一歩ずつ距離を縮めてきて、やがで真正目に立った。
私のほうが微妙に身長高いかな、などと考えてしまったのは完全に血迷っていた。それもこれも夏が暑いせいだろう。

「これどうぞ」

血迷っている間にいつの間にか手をとられていたことに驚き、その手のひらになにやら青い…男物のハンカチらしきものが乗せてあったので更に驚いた。

「えっと……?」
「さっきアイス零してましたよね」

そこに、と先刻確かにアイスを零した太ももを指さされて言われる。
確かに、確かにそうだが、アイスを零してティッシュやハンカチを探したりもしたが、何故水色の彼が知っているのだろう。そもそも水色の彼は一体いつ現れたのだろうか。どこから、いつ、いつから私を見ていたのか。
溢れ出る疑問は止まらない。きっと疑問符が頭上に出ていたのだろう。すべての疑問を彼は一掃した。

「ずっと居ましたよ。あなたがここにくる前から僕は隣のベンチに座ってましたから」

うわぁー…。最悪だ。 
ということはいつからレベルでなく一部始終ということになる。うわぁ、最悪。
恥しくて頬がどんどん熱くなるのが自分で分かってしまってつらい。というよりも最初からいたのに気付かないとは、どれだけ影か薄いのだ、この少年は。

「あそこの水道で濡らせば問題ないと思いますよ」











続かない\(^o^)/




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