「あぁ、ヒマです。フォンさん。」
ごろりとフォンの横に寝転がるタイヤが、だるそうな声で訴えた。その言葉にフォンは「あー」となんとも適当に答える。タイヤはそんなフォンを睨み付けると、仰向けに寝たままフォンの足を蹴った。タイヤならではの力で蹴られたフォンは思わず悲鳴と共に起き上がった。
「いいッてえな!何すんだよ!」
蹴られたところをさすりながら涙目でタイヤを見下ろす。当のタイヤは反応なしにごろりと横に寝返りをした。何にも言ってこないタイヤを不審に思い、フォンがタイヤの顔を覗きこむようにして覆い被さる。
「おーい、タイヤ君?聞こえてますかー?」
それでもピクリともしないタイヤにおーい、おーーいと再度声をかけていると、うるさいですね…ともぞりと動いた。
「んだよ、最初に構ってちゃんしたのお前だろ!」
「だって折角二人きりなのにフォンさんずうっと寝てるんですもん。」
フォンのほうを向いたタイヤは、明らかに機嫌の悪い顔のそれで、フォンはぎょっとした。と、同時に、可愛いことを言い出すタイヤに愛しさを感じた。
「…なんだ、それで機嫌が悪かったのかよ。」
よしよしと頭を撫でると、バシンと振り払われた。
「私は怒ってるんです。それ相応のことをしてくださらないと、」
「はあ?」
面倒くさいことを言い出すタイヤに思わずため息をついてしまうフォン。
「何がお望みで?」
ずいっと顔を寄せながら聞くと、びくっと目を見開くタイヤ。さっきまでの怒っていた表情は消え、少し恥ずかしそうに身を捩らせると、「きす、…してほしいです。」と小さい声で言った。
「ん…」
タイヤに軽くキスをしながら、やっぱり俺って甘いのかな、と内心思っているフォンであった。
end.