俺が試合終わりに告白まがいのことを口走ったのが一週間前のこと。そして部活終わり、学校からの帰り道を一緒に帰って欲しいと名前さんに頼んだのは一昨日のこと。本当は名前さんの家に迎えに行って何処かへ行くとか、休みの日に水族館でもいくだとかいろいろ考えてはいた。しかし名前さんに話があるから会って欲しいと言ったら、じゃあ部活終わりに学校の前で待ってるね、と言われたのだ。わざわざきてもらうのも申し訳ないと思って断ろうとしたら、懐かしいし学生気分を思い出したいとのことで渋々了解した。

「お疲れ様」
「遅くなってすいません」

 たいして待ってないよと笑った名前さんを見て急に心臓がうるさくなった。今日俺はあの時の言葉と、名前さんとの関係にけじめをつけるつもりできたのだ。しっかりしなくては。

「蝉がうるさいねー」
「まだ夏ですからね」
「なんだか昔に戻ったみたい」
「あの、」
「ん?」
「話が、あります」

 隣で小さくうん、と頷いた名前さんに歩幅を合わせながら次の言葉を考える。生ぬるい風が吹いて、ふわりと名前さんの匂いがした。

「あの時言ったこと、覚えてますか」
「うん、」
「名前さんのこと特別って言ったんすけど、それは本当で、でも」
「でも?」
「もっと言いたいことあって」
「うん」

 自分で言っていて恥ずかしくなる。顔に熱は集まるし、せっかくひいた汗もふきかえす。そんな顔を見られたくないのに名前さんの顔はみたくて、何時の間にか真剣に俺を見つめる名前さんと俺の視線はかち合っていた。

「お、おれと…」
「うん」
「俺と、付き合ってください」

 やっと言えた。答えを聞きたいけれど、言えた喜びをひとまず噛み締めたい。そう思った矢先、急に制服のネクタイが引っ張られ目の前が名前さんでいっぱいになった。

「名前、さん…」
「私でよければ、よろこんで」

 にっこり笑った名前さんに嬉しくなって今度は自分から唇を重ねた。緊張で掌が若干湿ってる。

「第一印象から決めてました」
「うん、知ってた」

 悪戯っ子のように笑った名前さん。少し恥ずかしくなって勢いよく後ろから抱きしめる。やっぱり名前さんはいい匂いで、遅ればせながら嬉しさがこみ上げてきた。


夏がはじまる

「っあー!良かったー」
「ん?」
「だって、なんか断られるかもとか考えたら怖くって」
「馬鹿だなあ、私好きじゃない人にキスなんてしないよ」
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