アウト、響き渡るその声に鳥肌が立った。のちに次々と聞こえてくる先輩や後輩たちの歓声。勝ったのだ。春日部に。準々決勝を突破したのだ。堪らなく嬉しくて、堪らなく気持ち良い。途中、メガホンを持って口を大きく開けて応援している名前さんを見つけた。その瞬間嬉しくて、そして緊張した。絶対負けられないのだ、と。そして、勝った。

「名前さん!」

 走って走って、球場の外で名前さんを見つけた。ワインレッドのワンピースから、白い肩が見える。日差しが強いからか、大きな帽子を被っていた。

「勝ちました!」
「うん、見てたよ」
「直接、伝えたくて」

 約束…と言いかけて言いよどむ。一歩、名前さんが俺に近づいた。

「本当におめでとう」
「ありがとうございます」
「私も、」

 私もあと二つ若かったらな、そしたら一緒に喜んで騒いだりできたのに。
 少し悲しげに笑った名前さんはそのまま俺の右肩に頭を預けた。汗臭いっすよ、と言いたかったけれど、どういうわけかその場から動けなくて、俺は恐る恐る名前さんの頭を撫でた。

「約束、覚えてる?」
「もっ勿論っす!」
「じゃあ今週末、ね。練習終わったら連絡して」

 何か吹っ切れたのか、言い終えてから笑顔を浮かべた名前さんは急に頭を起こして、俺の右肩をツンツンと人差し指でさした。じゃあ皆にもおめでとうって言ってくるね、と俺の傍から離れた名前さん。少し名残惜しく思いつつも、肩に残る名前さんの感触と匂いとが、俺を暫くその場から動かさなかった。

あなたに一番に報告したくて
 一生懸命な榛名君たちを見て、どうしようもなく嬉しくて、どうしようもなく寂しくなった。
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