「あーそれ可愛い!」
「でしょ?海苔カッター持ってきたから皆のにもやろうよ」

 放課後のおにぎり作りは私たちマネージャーの日課で、それは季節行事に関係なく毎日やってくる。
 期末テストが始まった今日ではあるけれど、私たち野球部にテスト期間なんて関係なく、三日後には開会式で夏大。
 練習にテストに…と一生懸命できっと皆今日が七夕なんて気付いていないんだろうな…と、今朝のニュースで気がついた私は家から海苔を星型に切るカッターを持ってきたというわけだ。
 千代ちゃんにそれを渡すと凄い可愛いーと器用に海苔を切っていく。

「いっぱいつけるとなんか気持ち悪いかも…」
「サッカーボールみたいにしたらいいんじゃない?」

 普段海苔使わないから皆びっくりするねーそれよりこれを見て七夕って気付く人いるかな?
 サプライズみたいで楽しいね、にこにことしてそう言った千代ちゃんに全力で頷いてから、最後の一つに星型の海苔をはりつける。
 完成!と二人で声を揃えて、麦茶と一緒に持っていく。そろそろ暗くなりはじめたころだろうか。

「めっしだー!」
「おにぎりー!」

 練習も一段落ついて、監督の休憩の声と同時に田島君を筆頭にベンチまで皆が走り出す。
 そして少しワクワクした心持ちの私と千代ちゃん。

「俺のー!ってあれ?星じゃん!」
「うわすげえ、でもなんで星?」
「なんか俺のサッカーボールみたい!」
「俺の、星、いっこ、だ…!」

 三橋君にそれは背番号だよ、と告げてから、皆の反応に満足する。でも、やっぱり星で七夕って解りにくかったかな。

「皆わかんない?」
「三星じゃねーもんなあ」
「しゅうちゃん…!」

 もーそうじゃなくてーと続けた私に、首を傾げる田島君と、目をぐるぐるとさせる三橋君。他に泉君と水谷君もきょとんとした顔をしている。

「…七夕だろ?」
「花井君!」

 おおーと回りから感心の視線を向けられている花井君に、私と千代ちゃんも安心する。それから落ち着いた声音で、栄口君も確かに今朝のニュースで見たかも、と笑った。もしかしたら我が家とチャンネルが一緒かもしれない。

「阿部は知んなかっただろー?」
「あーまあな」

それから口々に短冊やら天の川やら、七夕のワードが飛び交う中、監督がすっと私と千代ちゃんの間に入った。

「二人とも気が利くねえ」

 そう言った監督は背後から一本の笹を取り出した。にんまりと笑う監督に、キラキラとした眼差しを笹に向ける田島君。
 おにぎりだけでは叶わなかった七夕らしさが、笹のお陰でぐんと上がったようなきがした。

「実はこれ志賀先生が用意してくれたんだけど、今短冊渡すから皆で願い事書いてみよっか」

 一枚ずつ渡された短冊に、スコアブックの近くにある筆箱からペンを一本取り出す。なんでもいいから制限時間は20秒、スタート!の監督の掛け声に皆慌てて短冊に向かい合う。
 願い事、かあ。
 ちゃんと考える暇もなく、監督の残り10秒の声に慌てて筆を走らせた。

「はい終了!皆返してー」

 俺時間余ったぜーと笑う田島君に、そんな余裕なかったよと苦笑する沖くん。
 一通り目を通した監督は、はいじゃあ皆練習再開!とグラウンドに出る。それに続くようにして皆がグラウンドに向かう中、千代ちゃんが私に耳打ちをした。

「私たち、同じこと書いてたみたい」


一つでも多く、勝てますように。

:)100707
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