そう言えばもうすぐクリスマスですねーと職員室で何とは無しに話していたら、クリスマスというワードに糸色先生は過剰に反応てしまったようで、ガタンと立ち上がっていた。ああしまった、糸色先生のクリスマスへの嘆きの話は去年も聴いたじゃないか自分。

「だからですね、」
「はあ、」

 クリスマスは皆浮かれちゃいますからね、と適当に相槌を打てば絶望した!といつもお決まりのフレーズを口にした。
 もうクリスマスなんて憂鬱なだけですよ、と続けた糸色先生に、私はくすりと笑いが漏れた。

「糸色先生はクリスマス、ご予定あるんですか?」
「そんなあるわけないじゃないですか」
「あれ、ちょっと意外です」

 糸色先生は、いつも生徒さんたちと仲が宜しいからクリスマスも生徒さんたちと一緒とばかり…と続ければ、糸色先生は表情を曇らせてから、好きでそうしているわけではないですよ、と返した。だけど糸色先生の生徒さんたちと一緒にいるときの表情を思い出して、天邪鬼なのかな、と思い頬を緩ませたら糸色先生はずずっとお茶を啜った。

「第一、」

 クリスマスまで生徒と一緒だなんてそんな寂しすぎますよ、それに私だって一応男なんですがら、まあ倫には終わりかけのように言われてますけどでもそれでも、です!
 そう一気にまくし立てた糸色先生は、だけど残念ながら毎年同じようにして終わってしまうんですよ。と苦笑交じりにそう言った。
 そんなころころと変わる表情が面白くて、また笑ってしまえば、糸色先生に笑わないで下さい!なんていわれてしまった。

「確かにクリスマスは、恋人と過ごしたいものですよね」
「…先生は、恋人と過ごすのですか?」

 一瞬、時が止まってしまったのは、別に意味があったわけじゃなくて糸色先生がそれを言うという事になんだか吃驚してしまったから。
 でも、ワンテンポ遅れてから、生憎私も予定は無いんです、と苦笑交じりに伝えれば、糸色先生はほっと胸をなでおろしていた。

「あ、私もいなかったからって安心してるんですか?」
「そっそいういう意味じゃ…!」
「そうですよねー私なんかにいたら吃驚しちゃいますよねー」
「だっだから!」

 そういう意味じゃないですよ!と必死に取り繕う糸色先生になんだか面白くなってしまって暫く笑っていたら、糸色先生は口ごもってしまった。
 申し訳ないことをしてしまったなあーとは思いつつ、いつも生徒をたぶらかすことができるのは、この正直、と言っていいのだかわからないけれど、そんな性格が原因なのだろうかと思った。まあそんなことは当の本人は無自覚なんだろうけど。

「あ、そーだ!」
「なんですか?」
「もしよければ、の話ですが…」

クリスマス、ご一緒しません?
 よろこんで!と大声で言ってしまいそうになり、慌てて表情を悟られぬように下を向いてから、情けないほどの小さい声で肯定の返事をした。

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